父が知らぬ間に借金をしていましたーー。
弁護士ドットコムにそんな相談が寄せられています。
相談者の父親は60代で、一軒家を所有していますが、知らない間に1000万円前後の借金を していたことが分かったといいます。
「父が亡くなった時、借金は相続されるのでしょうか?」と不安になっています。
家族にとっては不安の種ですが、もし父親が亡くなった場合、家や借金はどうなるのでしょうか。相続時の注意点について新保英毅弁護士に聞きました。
●相続放棄をするとプラスの財産も相続できず
相続が発生すると故人が所有していた不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も相続人に承継されます。
そして、原則として借金は法定相続分に従い各相続人に当然に分割されます。したがって、今回のケースで、母がすでに亡くなっている場合は、子の人数で分割して、借金を返済する義務を負うことになります。
父の配偶者つまり母が存命の場合は、母が借金の2分の1を引継ぎ、残りの2分の1を子の人数で分割して引き継ぐことになります。
相続放棄をすれば、借金を引き継ぐ必要はありませんが、プラスの財産も承継できなくなります。
●相続放棄は相続を知ってから3カ月以内に
相続放棄の方法は、相続が発生したことを知った日から3カ月以内に故人の最後の住所地の家庭裁判所に相続放棄申述書を提出する必要があります。
相続放棄した人は初めから相続人ではなかったことになります。その結果、例えば父の配偶者がすでに亡くなり、子ども2人が相続人であった場合に、子どもの1人が相続放棄すると、もう1人の子どもが単独で相続します。
もともと子どもが1人だけだった場合は、唯一の相続人である子どもが相続放棄すると、子がいない状態となりますので、第2順位である父の親が相続人となり、父の親も亡くなっている場合は、次に第3順位である父の兄弟姉妹が相続人となります。
●プラスの財産の範囲で借金の返済義務を引き継ぐ「限定承認」も
なお、プラスの財産の範囲で借金の返済義務を引き継ぐ「限定承認」という方法もありますが、手続きが複雑になりますので、限定承認をする場合は弁護士に依頼することをお勧めします。
今回のような場合に備えて自宅を守るためにできる方法として、相談者ら相続人が父から適正価格で自宅を買い取り、その代金を借金の返済に充ててもらう方法が考えられます。