ナンパ目的で名古屋大学の建物に入ったとして、愛知県警は5月25日、東京都中央区の23歳の男性を建造物侵入の疑いで現行犯逮捕した。
報道によると、男性には、5月25日午前9時ごろ、名古屋大東山キャンパスで、教室が入った建物の1階に侵入した疑いがもたれている。男性が複数の女性に声かけていることを不審に感じた男子学生が声をかけたところ、男性は逃走。近くの路上で学生に取り押さえられた。男性はナンパのため、全国各地の大学を訪れていたとみられている。男性のものとみられるツイッターには、大学でのナンパを予告する書き込みがあった。
大学には学生以外の一般人も施設利用などで出入りすることもある。ネット上では、「近所の大学の食堂を利用するけど、これも犯罪なの?」という疑問の声もあった。今回はなぜ逮捕されたのか。刑事事件に詳しい冨本和男弁護士に聞いた。
●大学は「ナンパ目的」の立ち入りを容認していない
「建造物侵入罪は、管理権者の意向に反して建造物やその敷地に立ち入った場合に成立します。建造物侵入罪は、建造物やその敷地を管理している者の管理権を保護する趣旨だからです。
冨本弁護士はこのように述べる。一般の人で、大学の図書館などを利用している人も少なくないが、今回のケースとは、どう区別されるのか。
「国立大学では、図書館などの施設利用を一般人に認めているところもあります。一般人の立ち入りが普段問題とされないのは、大学の方で容認できる立ち入りだと信頼しているからでしょう。
ただし、立て看板・掲示・警備員の配置等で、学外の者の立ち入りを拒否していることが明らかであれば、学外の者が許可なく立ち入ることは大学の意向に反するので、犯罪に当たる可能性があります。
門番がいるような場合には、行き先と目的を示して許可を得てから立ち入るべきです」
報道では、ナンパ目的だったことがクローズアップされているが、そうした目的を持っていたことは犯罪の成立に影響を与えるのか。
「まさにナンパ目的であったことが犯罪の成立に影響を与えると考えます。
大学は学生や研究者が学んだり研究したりする場所です。『学外の者がナンパ目的で立ち入るとはけしからん、大学としては容認できない立ち入りだ』ということになるわけです。
今回のケースで男性は逃走していますので、その場で逮捕しなければ、そのまま逃亡したり、後日自分は立ち入っていないなどと言って言い逃れしたりする可能性があったと思います。
逮捕もやむを得ないケースだったのではないか思います」
冨本弁護士はこのように述べていた。