国家公務員を対象として、「ゆう活」と名付けられた朝型勤務のキャンペーンが7月1日から始まった。勤務開始時間を1〜2時間早めて、原則として17時前後には仕事を終わらせる。残業時間を抑制し、夕刻からは趣味などオフを楽しむのだそうだ。キャンペーンのウェブサイトは「さあ、帰ろう。キラめく夕方が待っている。」と呼びかけている。
政府には、国家公務員が率先して朝型勤務と残業抑制に取り組むことで、民間企業にも浸透させたいという意図があるようだ。民間でも、勤務時間を早めた「朝型勤務」に関心をしめす労働者が増えている。しかし、これまで「サマータイム」の導入がなんども議論されながら、実現にいたっていないという現実もある。
はたして、今回の「ゆう活」キャンペーンをどう評価したらいいのか。企業の人事部での勤務経験をもつ神内伸浩弁護士に聞いた。
●残業を減らすきっかけになる
「『朝型勤務』制度を導入することは、残業を減らすきっかけとして、一定の意義はあると思います」
神内弁護士はこのように切り出した。どういうことだろうか。
「残業の要因としてまず挙げられるのは、業務量が多いということでしょう。これは健康配慮義務を負う企業側がきちんと労働時間等の管理を行い、適正な業務分担を心がけて、解消していくべき問題です。
しかし、残業が生じる要因は単に業務量の多さに比例するわけではありません。付き合い型、抱え込み型、ダラダラ型、なりゆきまかせ型、生活型、自己満足型などといった、個々人の働き方そのものが要因といえる場合も少なくありません。
『朝型勤務』制度を導入して、夕方に仕事を切り上げることにより、こうした属人的な原因にもとづく残業を減らすきっかけとして、今回のキャンペーンは一定の意義があると思います」
●ほんとうに必要な残業は、むしろ増える可能性も
民間企業もどんどん取り入れた方がよいということだろうか。
「手放しにそうとは言い切れません。
残業の要因がこのような属人的なものではなく、外部要因(たとえば、顧客の指示待ち、納期切迫、トラブル対応等)による場合には、『ゆう活』などと悠長なことは言っていられないでしょう。
また、行政でも民間企業でも言えることですが、営業時間が決まっている、いわゆる窓口業務に従事する人たちにとっては、朝早く出勤しても仕事がなく、また、夕方帰ろうとすると営業時間内に帰ることになってしまうという問題もあります。
結局、『朝型勤務』制度を導入した場合、一定の無駄な残業を抑止する効果は期待できますが、真に必要な残業はなくなりません。むしろ、増える可能性すらあります。
その結果、『ゆう活』で早々と帰宅する人たちと、そのしわ寄せを受け、さらに残業が増す人たちとの『格差』が一層広がるという一面があることも企業側は自覚しておくべきです。
ブームに乗って、制度を導入すること自体は悪くありませんが、それだけで『良し』とはせずに、残業の多さにより、メンタルヘルスの不調に陥る人が出ないように労働時間管理を徹底するなど、より一層の配慮が求められるところです」
神内弁護士はこのように述べていた。