会社を退職する際、制服をクリーニングして返すように言われたーー。こんな相談が弁護士ドットコムに複数寄せられています。
ある相談者は、アルバイトを始めた際には何も言われず、制服を渡されました。しかし、辞めるときになって、「シャツ2枚とジャケット1枚返却の際クリーニング代2万請求するから」と言われ驚いています。
また、最近、飲食店のバイトを辞めたという相談者は、制服をクリーニングして返すように言われました。契約時には一切言われておらず、「家での洗濯だけできれいになってるように見えているのですが、クリーニングに出してから返す必要はあるのでしょうか」と疑問に感じているようです。
制服のクリーニング代は、働いた人が負担しなければならないのでしょうか。西山良紀弁護士に聞きました。
●雇用契約した時に明示されたか
ーー制服のクリーニング代については、相談が複数寄せられていました
労働者が制服のクリーニング代を負担しなければいけないかどうかは、雇用契約に「労働者が制服のクリーニング代を負担する」という条件が含まれているかどうかによって決まります。
そのような条件がなければ、仕事で汚れた制服のクリーニング代は雇用主が負担することとなり、労働者がクリーニング代を負担する必要はありません。
ーー条件が入っていたら、どうでしょうか
雇用契約に「労働者が制服のクリーニング代を負担する」という条件が含まれている場合、正社員かアルバイトにかかわらず、雇用主は、雇用契約締結時に、そのような条件が含まれていることを明示しなければなりません。この明示を怠った場合には、雇用主は、労働基準法違反で処罰されることになります。
無用なトラブルを避けるためにも、雇用契約を締結する前に、雇用主から明示された労働条件をしっかり確認する必要があります。
●まずは雇用契約書などを確認
ーーアルバイトを始めるときに、制服のクリーニング代の負担に関する条件までしっかり確認している人はあまりいないかもしれません
しっかり確認しろと偉そうなことを言っている私も、大学生のころ、法律を勉強していたにもかかわらず、飲食店でアルバイトを始めるときには、時給、労働時間、まかない料理くらいしか確認していませんでした。
雇用主側でも、制服のクリーニング代は労働者が負担するのが当たり前だという思い込みから、法律上の根拠とかを考えることなく、なんとなく制服のクリーニング代を請求しているというケースもあるのではないでしょうか。
もし、制服のクリーニング代の負担に関してトラブルに巻き込まれた場合は、クリーニング代を負担するかどうかの回答をいったん保留にして、就業規則、雇用契約締結時にもらった労働条件通知書や雇用契約書等に制服のクリーニング代に関する条件が記載されているかどうかを確認してみてください。
また、クリーニング代を支払う前に、法テラスや行政機関の実施している法律相談を利用して、一度弁護士にアドバイスを求めたうえで、雇用主と交渉するのが良いと思います。