財務省の前事務次官による女性記者へのセクハラ問題を受け、性暴力被害者と報道関係者らでつくる市民団体「性暴力と報道対話の会」は5月17日、メディア関係者を対象に、セクハラ被害を調べたアンケート結果を公表した。
セクハラを受けた経験がある人に、加害者との関係性を聞いたところ、社内や同業者などからのセクハラ被害が半数にのぼる状況が明らかになった。
元毎日新聞記者で性暴力に詳しい上谷さくら弁護士は「社内からのセクハラ被害がこんなにも多いとは思っていなかった。他人の批判はするが自分たちは変えないというのか。放置せず、自らも律するべきだ」と批判した。
●39人が「性的な関係を強要されそうになった」と回答
アンケートは同会が2018年4月24日〜5月7日までの2週間、ウェブで実施。新聞や放送局、フリーランスなど20〜60代の男女107人(女性103人、男性4人)が回答した。
全回答者のうち、102人がセクハラを受けたと回答。そのうち、10回以上受けた人は51人、2〜9回受けた人は47人と、ほとんどの人が複数回のセクハラを経験していた。
また被害にあった年代は、複数回答で20代のときが91人と最も多く、加害者の年代は40代が58人、50代が54人と、40代以上が最も多かった。セクハラの相手は、複数回答で「取材先・取引先」が74人ともっとも多く、上司が44人、先輩が35人、同業他社が14人と続いた。
具体的な被害態様では、「抱きつかれた」(49人)、「性的な関係を強要されそうになった」(39人)、「性的な関係を無理やり持たされた」(8人)と深刻な被害があった。
しかし、約6割がセクハラ被害の相談を「しなかった」、または「考えなかった」と回答。理由として「だから女は面倒だと言われる」(38件)、「きちんと対応してくれると思えなかった」(31件)などといった声があった。
●「報道がひとごとのように見える」
上谷弁護士は今回の調査について、「(メディア側ではなく)市民団体がやったこと自体、情けない」と指摘。「過労死の問題もそうだが、メディアは自分たちの問題に目をつぶり続けてきた。報道がひとごとのように見えるが、自分の会社の中がどうなっているかを厳しく見たらどうか」と苦言を呈した。
また、回答者の多くが20代の時にセクハラを受けたという結果について、「(この年代は)無防備でつけ込まれやすい。非常に荷が重い仕事を任されており、スタート地点で『使えないやつと思われたくない』というプレッシャーもある」と分析。
「『このくらいで泣き言を言うものではない』と上から言われると、自分の根性が足りないと思いがちだ。そうした体質も問題だと思う」と『根性論』がはびこるメディアの体質を指摘した。
●「男性もこの問題に一緒に取り組んで」「社内のセクハラ、枚挙にいとまがない」
自由回答では、「閉鎖的で古い業界で、男性もハラスメントに晒されていることは想像でき、この問題に一緒に取り組んでほしい」「社内の上司のセクハラにあい、半年を経て、上司に処分が下った。しかしその後、私自身が仲間はずれにされるなど大変だった」「記者の仕事にはセクハラはつきものだ。社内のセクハラは枚挙にいとまがない」などといった声が寄せられた。
アンケートを実施した「対話の会」メンバーで、性暴力被害者支援看護師(SANE)の山本潤さんは、「今回の結果を見て、ショックを受けた。とても悲しい。メディア関係者のセクハラ被害の実態が、具体的に出て来ており、自由回答は魂の叫びだ。こうした状況がそのまま放置されて来たのかと思うと許せない」と話した。
同会はセクハラ防止対策を求め、アンケート結果と要望書を日本新聞協会、日本民間放送連盟などに提出した。調査は現在も継続中で、6月末まで実施する予定。アンケートのリンクは以下。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSftM-ce6Sftc6QDBgyaOLcdE3oIZQM2JMVqZqXRJJ_6eUXwhw/viewform{target=_blank}
【5月18日09:50】アンケートの詳細結果について、一部、数字を改めました。