2018年04月19日 09時37分

警察幹部のセクハラ、女性記者の葛藤「泣き寝入りするしかなかった」会社に不信感も

出口絢 出口絢
警察幹部のセクハラ、女性記者の葛藤「泣き寝入りするしかなかった」会社に不信感も
取材に応じた女性

「週刊新潮」(4月19日号)が報じた財務省の福田淳一事務次官のセクハラ疑惑。4月18日夜に福田事務次官は辞意を表明したが、疑惑を改めて否定した。

一方、テレビ朝日は19日未明に記者会見を開き、福田氏のセクハラ被害を受けた女性が、同局の記者であることを公表した。女性社員は上司(役職は不明)に相談したものの、報道すると二次被害が心配されることなどを理由に「報道は難しい」と伝えられたという。判断したのはその上司一人だった。

同局は財務省に対して正式に抗議をする予定だというが、今回の被害に限らず、女性記者が取材先からセクハラ行為を受けることは、そう珍しくはない。

あるテレビ局の女性記者は警察を担当していた数年前、警察幹部からセクハラ行為を受け続けていた。女性は社内で同期一人だけにしか詳細を話していない。

「被害届を出すかどうかまで考えたけど、証拠も残っていないし、記者生命が終わりになるから泣き寝入りした。その警察幹部のために、私がやりたい仕事を失うのは嫌だったから」

未だにどうすればよかったのか悩んでいるという女性。「同じ思いをしている人は多いと思うから」と取材に応じた。(編集部・出口絢)

●「私が我慢していれば何もなかったことになる」

テレビ局や全国紙など報道機関の新人記者は、多くが「サツ回り」と呼ばれる警察担当を記者生活の振り出しとする。そこで事件や事故の情報を聞き出すために、日中の官舎回りに加えて、「夜回り」や「朝駆け」といって、出勤前や帰宅後に捜査幹部の自宅に行く取材方法をとる。取材相手との信頼関係を築いて、他社よりも早く独自の情報を報道するためだ。

女性がセクハラに悩まされたのも、そうして仲良くなった警察幹部だった。最初は酔っ払った時に、手を握ってきたり、膝の上に手を置いてきたりするくらいだった。当時1年目だった女性は、「女性記者って大変なんだな」「マスコミ業界だとこんなこともあるのかな」と自分で自分を納得させた。

しかし、セクハラ行為は、どんどんエスカレートしていった。ブラウスの中に手を入れて胸を触ろうとしたり、女性の手を幹部の股間に当てようとしたりするようになった。無理やりキスもされた。「飲み会の場で、私と付き合っている前提で話をしてくるんです。『俺が結婚してやってもいい』『お前のこと世話してやってんだから、それくらいするのが当たり前だろ』と言われました」

女性は触られようとするたびに、「いやいや」と相手の手を阻んだ。「本当にそういうことやるの辞めてほしい。自分のためにもならないですよ」とも言ったが、「まあまあ」と濁されて終わりだった。

「年次も上がって、ようやく普通じゃなかったんだなって冷静に判断できるようになりました。当時は単純に気持ち悪いし嫌だなと思っていたけど、お世話になってた部分もあったから、我慢せざるを得なかった」

警察担当を外れてからも、携帯に立て続けに不在着信が入ったり、「なんで構ってくれないんだ」といったメールが届いたりした。それでも相手からの連絡は完全に断つことはできなかった。

「私が警察担当を外れても、相手はまだ警察幹部のまま。私と相手の関係が壊れたら、次に警察担当をする後輩が嫌な目にあうんじゃないかと思ったんです。私が我慢してれば何もなかったことになるのに、お前の社と口は聞かないとなったら、会社にとって損害になってしまう。それは申し訳ないから、我慢をしていました」

●「今でも告発したい」

女性は「今でもセクハラ被害にあったことを告発したい」と話す。被害届を出して刑事事件化することも考えた。でも結局セクハラ被害を訴えることはできなかった。「取材源の秘匿」を破ることになるからだ。

「私が誰々からセクハラにあったと話したら、それは自分のネタ元を明かすことにもなる。『あいつは秘密を守らないんだ』『セクハラと言い出すような面倒臭いやつなんだ、関わるのやめよう』と思われて、取材相手も警戒する。今後、取材活動自体ができなくなったら、仕事にならない」

「はあちゅうさんの『#MeToo』の告発を見ていて、これからの人生をかけて言ったんだろうなと思った。それが羨ましくもあった」

●「週刊誌に言った気持ちがよく分かる」

加えて、会社が守ってくれないだろうという思いもある。男性記者からは「女だから情報取れるんだろ、いいよな」と言われたこともある。そんな空気の中でセクハラ被害を言えば、「それ見たことか」と思われる。

「絶対に自社の記者がセクハラにあったって、会社は社をあげて抗議なんかしてくれないです。言った方がバカを見る。やんわりと干されて、自分の希望の部署にはいけなくなります。単純に正論をかざしても、会社は一緒に戦ってくれない」

セクハラ被害の告発と、自分のこれからの仕事。女性はこの二つを天秤にかけて、自分の仕事をとった。告発のために、今の仕事を捨ててまで戦いたいとは思わなかった。

「これまで散々嫌な目にあってきたのに、告発することで、自分の仕事まで失うなんて。怒りは収まらないし許せないけど、会社に言ったところで自分が損をするだけ。週刊誌に告発することで、自分のなかでけりを付ける。週刊誌に言ったテレビ朝日の女性記者の気持ちがよく分かります」

(弁護士ドットコムニュース)

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この記事へのコメント

匿名ユーザー 60代以上 男性

企業(マスコミも含めて)の中のセクハラ、パワハラをどうしたら根絶できるか。この事の解決がない限り男女びょうどう社会は実現しない

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ヒトシ 60代以上 男性

セクハラ行為の最大の問題点は、各人により、またその相手との関係性により、その行為がセクハラかどうかの判断が分かれる、という事だ。

今回の事務次官の発言内容は、私(現在60代)が20〜30代の頃、会社の同僚の女の子には下ネタとしてよく話していた事だし、言葉だけでなく胸やお尻を触ったり、逆に女の子の方も私の股間やお尻を触ってきたりと、お互い様であり、余程現在のセクハラとは縁遠かったと思うからだ。

その女の子と私は恋人関係にはなく、単なる同僚に過ぎないが、しかしお互いにそのような行為について暗黙の了解があった、と私は考えている。もっともこれは、私が若かったからであろうし、60代となった今、若い女性に行ったら、セクハラになるであろう事は良く理解している。つまり、相手や時と場合をわきまえて行うべき行為である。

とすれば、事務次官とそれを取材する記者という関係においてはどうだろう。確かに業務上の付き合いでしかないが、信頼度を高めるために、プライベートも含め様々な会話をすると思われる。そして、その行為がセクハラとなるかどうかの判断は、お互いにその行為について暗黙でも合意がなされていなければならないが、事務次官のような50代の既婚男性と若い女性記者とがそのような関係になる事は、女性側からしたら可能性としては大変低いだろう。また既婚男性であっても、独身女性を単に口説くだけならセクハラにはならないと考えるが、今回はそうではない。

もっとも、事務次官がアイドルのように若くてカッコ良ければ、セクハラになっただろうか? ここはある意味都合が良いのであり、例えば元SMAPのキムタクのような事務次官だったら不倫してしまう女性記者もいるのではないか?

要するに、加害者側の故意とは関係なく、被害者側の感情だけでセクハラかどうかが決まってしまう事に注意が必要である。つまり、加害者側がセクハラの故意は無く、コミュニケーションの一環と考えて行った行為であるにもかかわらず、被害者側がセクハラと感じれば「セクハラ」と認定されてしまうのが現在であり、その事を十分注意する必要がある。

セクハラ根絶 男性 40代

この件は女性記者がいやがって何度も拒絶しているにもかかわらず元財務次官がしつこく言い続けたのですから、確実にセクハラです。

「今日ね、今日ね・・・・・・抱きしめていい?」(福田元次官)
「だめです」(記者)
「じゃあ(旦那は)浮気しないタイプなの?予算通ったら浮気するか。いやいや手縛って良いから、手を縛ってあげる。胸触って良い?」(福田元次官)
「だめですよ」(記者)
「手縛って良い?」(福田元次官)
「そういうこと本当やめてください」(記者)

あとひとつ確認したいのですが、「女の子の方も私の股間やお尻を触ってきた」というのは本当ですか??? 本当であれば少々異常な女性であり、そういう人が投稿者さんの身の回りにいたというのは、投稿者さんにとって大変に不幸なことだと思います。なぜなら、女性を見る目をそのひとによって歪められてしまった可能性があるわけですから。

匿名ユーザー 男性 20代

やべえな、この爺さん。
昔の考えだと言いながらも、その考えを捨てきれない。
暗黙の了解とか、〜と思う(考える)とか、
こういう考えの人がセクハラと訴えられるんだと、とっても勉強になりました笑

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ミミ 20代 女性

ヒトシさん、本当にキモい。
コミュニケーションの一環で体を触る必要はないし、男女ともにそんなことしちゃだめでしょう。受け取り方の問題ではなく、行為の問題。
パートナーでもないのに体をむやみに触ったり、性的な話題を強要するのはセクハラです。
「昔は胸やお尻を触るのは普通だったんだぞ、俺の尻もさわって良いぜ!」「セクハラは被害者の受け取り方次第だよな」なんて冷静に話してるおじさん、家族とかいるんですか?自分の娘や母親が会社でおっさんに胸触らせて、股間触ってるって思ったら許せなくないですか?
(まあ、こういう人は会社の女の子は俺の娘じゃないしどうでもいいと思うものなのかもしれませんが。)倫理観なさすぎてびっくり。
『被害者側の感情だけでセクハラかどうかが決まってしまう』と思ってるおじさんがいるから、男性にセクハラされても『被害者が黙ってればコミュニケーション』というポジティブでセーフな行為になってしまう事は恐ろしいし嫌な考えだと思います。
会社でセクハラされて嫌だと思っても、下心を感じて気持ち悪くても、おじさんが「コミュニケーションだ。お前が被害者だと思わなければセクハラではない」という考え方をしていて、女性にも「君は自分が被害者と思わないよね」と期待しているから、何も言えないんです。だって、それさえなければおじさんは(時には)いい人だし、社会的に抹殺したいほど嫌いと思わないし、被害者だと言った瞬間、おじさんは敵になるわけだし…セクハラが気持ち悪く痴漢に並ぶ最低な行為だって認識されて、自他ともにハラスメントに厳しいおじさんが最高にカッコいいという認識が広まれば、こういう思いをする人は減るのでしょうか。

あと、相手がキムタクでも、セクハラしてくる時点で異性関係になりたいとは思わないです。

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もういい加減にして 30代 女性

他の方がだいたい言いたいことを言ってくださってるので、同じことは連ねませんが「イケメンなら許されるんだろ」みたいな意見本当もういい加減にしてください。例えイケメンになら何されてもいいという人がいたとして、それが誰にでも通用すると思っている時点で倫理観がどうかしてます。恋人でもなんでもないただの同僚でも美女になら唐突に下品な下ネタぶつけられても身体を無遠慮に触られてもいいんだ世の中のすべての男性はってなるでしょう。そんな訳ないですよね。おぞましく思う男性もいるはずです。(まあヒトシさんは嬉しいんでしょうが)
あと暗黙の了解だったとか、それこそ受け取る側の妄想じゃないんですか?言質をとっていないことを空気で許されてると思うの、あなたの言うセクハラされた側の被害妄想じゃないの?っていうのと同レベルなので、もっと広い視野を持った方がいいですよ。
そういう空気を許容してきた女性にも、責任はあるのでしょう。(そう選択せざるを得ない社会だとしても)でもやっとこうして声をあげて、体を触る、触ろうとする行為は嫌なんだと態度を示すことで、本当に悪意なく、許される範囲だと思っていた行為を考え改める人もいるでしょう。それが大勢になり、常識になり、仕事をしやすい、お互い住みやすい社会になるようにと願うばかりです。

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