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労組がHPに掲載した「管理職のセクハラ告発」、会社が訴えるもセクハラ認められ敗訴
訴えられた鷹尾嘉秀執行委員長(左)と新村響子弁護士

労組がHPに掲載した「管理職のセクハラ告発」、会社が訴えるもセクハラ認められ敗訴

セクハラ被害に遭ったと女性から相談を受けた労働組合がホームページに「セクハラ発覚」「会社隠ぺい」などと掲載したことで、名誉を傷つけられたとして、神戸市の化粧品会社が同社の労働組合などに約1000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は3月29日、会社の請求を棄却した。

争点は(1)セクハラ行為の有無、(2)正当な組合活動だったか、の2点だったが、判決ではどちらも認められ、組合側代理人の新村響子弁護士は「こちらの主張が全面的に通った判決だ」と話した。

●交渉決裂、ユニオンHPに経緯を記載

判決後に東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見した新村弁護士によると、訴えたのは化粧品や下着を訪問販売している「シャルレ」(神戸市)。同社は「ビジネスメンバー」と呼ばれる代理店を通じて商品を販売。代理店やその傘下にいる特約店の大半は、女性だという。

代理店の女性は2016年3月、シャルレの褒賞ハワイツアーの際に、他に10人ほどの女性がいる中で、営業本部長に背後から両肩に手を置かれ、肩や鎖骨部分を触られた。女性がセクハラの被害を受けたとして、シャルレユニオンに相談したが、同社は5月、コンプライアンス委員会の審議の結果、セクハラに当たらないと結論づけた。

その後、ユニオンが同社と団体交渉を行ったが、交渉は決裂。ユニオンは6月、「T営業本部長のセクハラ発覚」「会社隠ぺい」との見出しで、HPにセクハラ事案の概要や同社との交渉の経緯を記載した。この結果、会社が8月に提訴。女性も9月、同社に対して損害賠償を求める訴訟を提起している。

●セクハラ行為認め、名誉毀損の成立を否定

判決は、セクハラを受けた被害者が内心で不快感や嫌悪感を抱いても、人間関係が悪化することを懸念して、加害者に対する抗議や抵抗などを躊躇することは考えられると判断した「海遊館事件」(最高裁平成27年2月26日判決)に触れ、「ただちに異議を述べなかったことをもって、女性が不快感を感じなかったことの根拠とすることはできない」とセクハラ行為を認めた。

また、HPに記載した内容については、「原告側の見解も併記しており、労働組合がHPを通じて情宣活動をすることは一般的な活動であるといえる」と判断。「T営業本部長」とイニシャルで表記したことについても、「ただちに特定できず、表現態様も相当なものというべき」と名誉毀損の成立を否定した。

●「正当な組合活動として認められた」

新村弁護士は、「セクハラがあったことが明確に認められ、セクハラ問題を追及した労働組合の行為は、名誉毀損に当たらないと判断された。セクハラは相手が拒否していないなら大丈夫だと考える人も多い中で、今回の判決は重要な指摘を含んでいる」と評価した。

また今回会社から訴えられたシャルレユニオンの鷹尾嘉秀執行委員長は、「第三者委員会が正常に機能しなくなったときに、組合は唯一の支援組織になれる。今後とも気を引き締めて活動に取り組んでいきたい。正当な組合活動として認められたことは、非常に嬉しく思っている」と話した。

(弁護士ドットコムニュース)

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