ネイルサロンでアルバイトとして働き始めたところ、入店から1カ月で3件の「悪い口コミ」が寄せられたため、解雇されてしまった。泣き寝入りしたくないが、はたして何ができるのかーー。そんな相談が弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
相談者は、ほかの店での勤務経験は長いが、その店の業務について十分な教育を受けないまま、初日から接客を始めた。クレーム内容は「家に帰ったら出血していた(サロンでの仕上がり時には出ていない)」「ソファ席が合わず辛い時間を強いられた。サンプルと仕上がりが違った」「接客態度が威圧的だった」といったものだが、相談者には言い分があるようだ。
また、ワンマン社長の理不尽な言い分に反論したこともあったため、悪い口コミに加えて、自分が社長に気に入られなかったことも解雇の理由ではないか、と考えている。
相談者はこのまま解雇を受け入れ、泣き寝入りするほかないのだろうか。光永享央弁護士に聞いた。
●「解雇権濫用法理」で考えてみると・・・
「今回のケースは『能力・適性を理由とする期間途中の普通解雇」といえますが、ズバリ、本件解雇は無効です」
光永弁護士の結論は明快だ。
「まず、本件相談者が正社員であったと仮定して検討してみます。
この場合、解雇するには『客観的合理的理由』と『社会通念上相当性』が必要です(労働契約法16条の解雇権濫用法理)。
1カ月間に3回の悪い口コミ(クレーム)の存在が『客観的合理的理由』といえるかは、事実関係しだいでしょうね。クレーム内容が真実か否か、証拠をもとに判断することになります」
今回の相談者は、クレームに対しては言い分があるようだ。しかし、もし「クレーム内容は真実」と判断された場合、解雇は認められるのだろうか。
「仮に肯定された場合であっても、解雇が労働者の生活に重大な影響を与えるものである以上、よく検討されるべきです。
解雇事由が重大な程度に達しており、度重なる注意・指導によっても改善の見込みがなく、労働者の側に酌むべき事情がないという状況でない限り『社会通念上相当』とは認められません。本件は少なくともこの要件を満たさず、無効と考えます」
光永弁護士は「アルバイト(有期労働契約者)の場合について検討します」と続ける。
「一般に、非正規労働者は正社員よりも弱い立場のイメージがありますよね。
ですが、契約期間途中に解雇するには『やむをえない事由』(労働契約法17条1項)が必要とされ、これは正社員の解雇権濫用法理よりも数段厳しい規制なのです。
したがって、正社員の場合でさえ解雇無効となる事案で、アルバイトに対する期間途中の解雇が有効となる余地はありません」
光永弁護士はこのように見解を示した。