近隣住民が仕掛けた罠に飼っている猫が捕まった人から「猫を返してもらえない」と悲痛な相談が弁護士ドットコムに寄せられた。
相談者によると、相手は動物嫌いで、狩猟用の罠を仕掛け近所の猫を手当たり次第に捕まえる「ネコ狩り」をしているという。
相談者は普段、室内で首輪をさせて猫を飼っているが、ある日、少し目を離したすきに猫が外に出ていき、数時間後、近隣住民の家の敷地内から鳴き声が聞こえてきた。
すぐに声がした方に向かうと、罠に捕まった愛猫が暴れ足から血を流している姿を目の当たりにし、「心臓が飛び出るくらい恐怖を覚えた」。
相手方に電話で「返してほしい」と伝えたものの、「うちの敷地内に捕獲機を設置して何が悪い。そこで捕まった猫は俺の獲物だ。すでに俺の所有物だから返さない」と言われたという。
「家族同然で可愛がっている猫なので、震えが止まりませんでした」と話す相談者。こうしたケースで相手に法的な問題はないのか。また、動物への虐待で罪に問うことはできないのか。鈴木智洋弁護士に聞いた。
●愛護動物への虐待にあたる可能性高い
今回のケースは、近隣住民がその自宅の敷地に狩猟用の罠を仕掛けて、相談者の方の飼い猫をその足から流血するような態様で捕まえたということですが、相談者の方の飼い猫は動物愛護法上の愛玩動物に該当しますので、このような近隣住民の方の行為は、動物愛護管理法44条2項の「愛護動物を虐待すること」にあたる可能性が高いと思います。
愛護動物に対する虐待行為に対しては、1年以下の懲役刑又は100万円以下の罰金刑が法定刑として定められています。
また、相談者の方の飼い猫を捕まえたとしても、その飼い猫の所有権は依然として飼い主である相談者の方にありますから、近隣住民のその猫を返さないという行為(不作為)については占有離脱物横領罪(刑法254条)が成立する可能性もあるでしょう。
占有離脱物横領罪については、1年以下の懲役刑又は10万円以下の罰金という法定刑が定められています。
●所有権は相談者 相手に損害賠償も請求可能
もちろん飼い猫の所有権は依然として相談者の方にありますから、近隣住民の方に対して、所有権に基づく物権的請求権を行使して、猫を返すように求めることができます。
物権的請求権は民法に直接定められていませんが、当然認められると考えられています。
また民事上は、近隣住民の方に不法行為(民法709条、710条)が成立すると思いますので、相談者の方は近隣住民の方に対して、損害賠償(飼い猫の治療費や慰謝料等)を請求することもできます。