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長年連れ添った「内縁の妻」に遺族年金の支給認める判決…「本妻」はもらえないの?
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長年連れ添った「内縁の妻」に遺族年金の支給認める判決…「本妻」はもらえないの?

2012年に亡くなった建設会社元社長の男性(当時93)と内縁関係にあった岐阜市の女性(59)が、遺族厚生年金を不支給とした国の処分の取消しを求めた訴訟で、名古屋高裁は11月上旬、処分の取消しを命じた1審判決を支持し、国側の控訴を退けた。

報道によると、この女性は長年にわたって、男性と交際していた。男性が亡くなるまでの12年間は、女性方で同居。男性の通院に付き添ったり、介護に携わったりした。男性の死後、遺族年金の給付を国に請求したが、男性と本妻との婚姻関係が形骸化していたとはいえない、として不支給とされていた。

名古屋高裁は「2000年以降、(男性と本妻は)完全に別居し、事実上の離婚状態だった」と指摘。女性が配偶者にあたるとした1審判決を支持した。今回のように、内縁の妻が、遺族年金を受給できるのはどんなときだろうか。その場合、本妻は年金を受給できるのだろうか。中田充彦弁護士に聞いた。

●「内縁の妻」も遺族年金を受給できる

「『配偶者』が遺族年金を受給することができるのは、被保険者が死亡したとき、その被保険者によって生計を維持していた場合です。

この『配偶者』には、婚姻の届を出した法律上の妻(本妻)だけでなく、事実上婚姻関係と同様の事情にある事実婚の妻(内縁の妻)も含まれます。

したがって、内縁関係にある夫が死亡した当時、その夫によって生計を維持していたといえるのであれば、内縁の妻であっても遺族年金を受給することができます」

その場合、本妻は遺族年金を受給できるのだろうか。

「できません。今回のようなケースは『重婚的内縁関係』(=法律婚と事実婚が重複する場合)といいます。このようなケースでは基本的に、法律婚の妻(本妻)が、遺族年金を受給できる『配偶者』として扱われます。

しかし、法律婚が実態を失って形骸化し、事実上の『離婚状態』となっている場合、本妻は『配偶者』と認められず、事実婚の妻(内縁の妻)が『配偶者』として扱われます」

今回のケースでも、判決が確定すれば、男性の死亡時にさかのぼって、本妻は受給権を失うことになるというわけだ。

●本妻と「事実上の離婚状態」かどうか

配偶者として扱われるかどうかのポイントはどこにあるのだろうか。

「内縁の妻にとっては、本妻の婚姻関係が『事実上の離婚状態』であることを認めてもらえるかどうかがポイントです。それがどのような状態なのかは、明確に定義されておらず、個々の事案に即して判断されます。

具体的には、(1)別居の経緯、(2)別居の期間、(3)婚姻関係を維持する意思があるかどうか、(4)婚姻関係を修復するための努力がなされたか、(5)本妻の夫への経済的依存の状況(生活費の送金など)、(6)別居後の音信・訪問の状況(食事を共にする、旅行するなど)などの事情が考慮されます。

たとえば、別居が30年以上続いたとしても、それだけで『事実上の離婚状態』と判断されるわけではありません。

本妻の立場からすると、遺族年金を受給するには、別居後も夫と連絡を取り合ったり、直接会ったり、生活費を送ってもらったりするなどして、『事実上の離婚状態』と判断されないよう行動することが重要になるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

中田 充彦
中田 充彦(なかた みつひこ)弁護士 ゆい法律事務所
中央大学卒。埼玉弁護士会所属。不動産問題に関する訴訟事件や、離婚・男女問題、遺産相続問題などの家事事件を中心に、幅広い分野を取り扱っている。趣味は、食べ歩き。

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