離婚で子どもと離ればなれになった親にとって、「面会交流」は子どもに会う数少ないチャンスだ。しかし、離婚するときに約束したにもかかわらず、元配偶者に拒否されて、実際には子どもと会えないケースは少なくない。
離婚時に取り決めた面会交流の約束が守られない……という嘆きの声はネット上にもある。
ある相談サイトには、離婚1カ月目は約束通り3歳の娘と会えたが、それ以降は元妻が約束を守ってくれない、という男性の投稿があった。この男性は離婚2カ月目以降は娘と会うことができず、保育園の運動会の際に、遠くから離れて「姿を見た程度」だという。なお、面会交流の約束は離婚時に書面にしてあるが、公正証書は作っていないという。
このような場合、子どもに会うためには、どんな手立てがあるのだろうか。また、こういったことにならないための予防策はあるのだろうか。離婚トラブルにくわしい大和幸四郎弁護士に聞いた。
●家庭裁判所に「履行勧告」をお願いしてみる
大和弁護士によれば、元配偶者が面会交流に応じない場合、次のようなステップが考えられるという。
「まず、面会交流の履行を請求する通知等を送ります。しかし履行しない場合は、家庭裁判所に面会交流の調停の申立をします。調停でまとまらない場合は、審判になるでしょう」
このような調停や審判を通じて、「一定の結論が出る」ということだ。だが、それでも、相手が面会交流を拒むことがある。
「そのようなときは『履行勧告』という方法があります。すなわち、家庭裁判所に対して、履行勧告を求める申立をすることができます。申立先は調停や審判をした家庭裁判所です。
家庭裁判所は、相手に電話して、調査し、相手方に対して、『子供を会わせるよう』勧告してくれます。もっとも、履行勧告には強制力はありません」
あくまでも「勧告」だから、相手が承諾しなければ仕方ないということなのだろう。従わない場合は、どうすればいいのか。
●「間接強制」や「慰謝料請求」という方法もある
「相手方が履行勧告に従わない場合は、『間接強制』という方法が考えられます。これは、家庭裁判所に『面接交渉に応じない場合は、1回の拒否につき金〇万円支払え』と命じてもらうことで、間接的に面会交流を強制しようというものです。『履行勧告』に応じない場合は、家庭裁判所に間接強制の申立をすることを考えてみてもよいでしょう」
だが、この方法はあくまでも「間接的」な強制で、裁判所の執行官が子どもを強引に連れてきてくれるわけではない。もしかしたら、これでも面会交流が実現しない可能性もある。
「そのような場合は、相手方に対して慰謝料を請求することも考えられます。この点、過去の下級審判例には、離婚調停で月1回の父親(元夫)の面会交流権を決めたのに、これを無視した母親(元妻)に対して、慰謝料500万円の支払を命じたものもあります」
結局のところ、どのような方法でも、最終的には元配偶者の協力がないと、子どもとの面会は実現しないということだ。これまでの経験から、大和弁護士は次のように述べている。
「別れても親ということには変わりがありませんし、子どもにとっても、別れた親に会えることは嬉しいことだと思いますので、円満な面会交流が行われることを望んでいます」