離婚した父親が子どもに養育費を支払わないケースが後を絶たない。厚生労働省がまとめた2011年度の「全国母子家庭等調査結果報告」によると、離婚を原因とする母子家庭のうち、父親から養育費を受け取っているのは全体の19.7%に過ぎない。つまり、8割は養育費を払ってもらえていないのだ。
同調査によると、母子家庭の推計数は123万世帯に上っており、そのうち約8割が離婚を原因とする母子家庭だ。また、平均世帯年収は291万円に留まり、45.8%が「家計」に困っていると回答した。
弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも養育費の未払いに関する相談が多数寄せられている。8年前に離婚したある女性は、元夫が行方不明で養育費も支払われておらず、「子供のために少しでも回収したい」と訴えていた。
このように養育費が未払いの場合、元夫に強制的に支払わせることはできないのだろうか。また、この女性のように相手方が行方不明の場合、養育費を回収する方法はあるのだろうか。離婚問題に詳しい田中真由美弁護士に聞いた。
●離婚したときの調停調書や判決書がある場合は、その内容を確認しよう
「養育費の支払いが滞った場合は、まず、離婚時にどんな取り決めをしていたかを確認するのがいいでしょう」
田中弁護士はこのようにアドバイスする。
「もし家庭裁判所の調停調書や判決書があって、そこに養育費支払いについての条項があれば、家庭裁判所に『履行勧告』をしてもらえます。これは家庭裁判所が、支払い義務のある人に対して『ちゃんと払いなさい』と命令し、支払いを督促してくれる制度です。強制力はありませんが、一定の効果はあるようです」
●「強制執行」が可能なケースでは、給料からの「天引き」も可能
それでも、養育費が払われない場合は、どうすればいいだろう?
「もっと強力な方法としては『強制執行』があります。離婚の際に交わした公正証書や調停調書、判決書などの書面によって養育費の支払いが定められている場合には、地方裁判所に強制執行の申立をして、支払い義務者の財産を差し押さえて強制的に養育費を取ることができます。
養育費については、あらかじめ決めた金額の一部でも支払われていなければ、支払期限がきていない『将来の養育費』についても一括して強制執行ができます。例えば、元夫が会社員である場合には、元夫の給料から天引きという形で養育費を受け取ることができます」
でも、相手が行方不明の場合には・・・?
「元夫の住所がわからないと裁判所に強制執行を申し立てることはできません。もっともそのような場合、住所を調べる方法はありますので、弁護士に相談してください」
それにしても、8割ものケースで養育費が支払われていないというのは深刻だ。心当たりのある人は、裁判所からの通知を受け取る前に、きちんと誠意を見せたほうがよさそうだ。