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「10年不倫」に終わりを告げる時 重婚発覚してもズルズル6年、彼氏を訴えられる?
もう終わらせたい!(ペイレスイメージズ1/PIXTA)

「10年不倫」に終わりを告げる時 重婚発覚してもズルズル6年、彼氏を訴えられる?

彼氏と結婚しようとしたら「重婚」が発覚。それから6年経っても離婚しない彼との別れに、せめて慰謝料は請求できないでしょうかーー。このような相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者の女性は今から6年前、婚姻届を役所に提出したところ、「(彼氏側が)重婚のため受理できない」と言われ、彼氏が別の女性と結婚していることが発覚してしまったそうです。その時点で交際4年が経過していました。

彼氏は「自分は既に離婚していると思っていた。ずっと別居しているし子どももいない。妻がわざと離婚届を出していないのかもしれない」と言い、早く離婚すると相談者に伝えました。

しかし、「話し合いの日に来ない」「慰謝料が足りない」などと理由をつけて、それから結局、6年間彼氏は離婚をせずズルズルしたままです。怪しいと感じていたところ、彼氏の妻から「実は一緒に生活をしていて子どもが2人いる」と連絡が来ました。

相談者はずっと嘘をついていた彼氏に慰謝料を請求して、別れたいと考えています。相談者はどのような権利を主張できるのでしょうか。瀧井喜博弁護士に聞きました。

●重婚的婚約は「無効と判断される可能性が高い」

——婚約不履行などで相手男性に慰謝料を請求することもできるのでしょうか

婚約不履行を理由として損害賠償請求を求めるためには、婚約が有効に成立していることが必要です。

しかし、既婚者との間で行う婚約(重婚的婚約)は、法律婚を重視するという法の趣旨から、一般的には公序良俗に反するものとして無効となります。もっとも、具体的事情を考慮し、重婚的婚約が公序良俗に反しない事情がある場合には有効と考えられています。

今回の相談者の事例では、交際相手の妻から「実は一緒に生活をしていて子どもが2人いる」との連絡があり、交際相手の男性の婚姻関係は継続していると考えられます。

このような相談者と交際相手との重婚的婚約は、公序良俗に反して無効と判断される可能性が高いです。そのため、婚約の不履行を理由とする損害賠償請求は認められないと考えられます。

●貞操権の侵害を理由に慰謝料請求は可能?

——貞操権侵害を理由とする慰謝料請求については可能でしょうか

一般的に、結婚を見据えた交際の中で、既婚者であることを隠していた場合には、貞操権侵害を理由に慰謝料を請求することが可能です。

しかし、今回の相談者は、相手の男性が既婚者であると知った後も6年にわたって交際を継続していました。このような場合でも、貞操権侵害を理由とする慰謝料請求をすることができるのでしょうか。

交際相手が既婚者と判明した後も交際を継続すると、結婚の意思がなかったものとして、貞操権侵害が認められにくくなります。しかし、今回の事案では、交際相手が既婚者であると判明した後も、交際相手から「ずっと別居しているし子どももいない。」「妻がわざと離婚届を出していない」「早く離婚する」「話し合いの日に(妻が)来ない」「慰謝料が足りない」等、実際とは異なる嘘をつき続けていました。

相談者は、交際相手からの嘘を信頼し、妻との婚姻関係は破綻しており、離婚するものと信じていていました。このような場合には、既婚者と知った後も交際相手の離婚の成立後に結婚する意思があったものとして、貞操権侵害が認められることもあります。

●「嘘に気付けたはず」と主張が認められない可能性も 

——この相談者は相手の婚姻関係は破綻したと考えていたようです。もし仮に、相手の妻から慰謝料を請求された場合、支払う義務はあるのでしょうか

交際相手の妻から慰謝料を請求された場合、今回のように、実際に婚姻関係が破綻していないときには、相談者が婚姻関係は破綻していたと考えていても、慰謝料の支払義務を負わないと判断されるケースはあまり多くありません。

長年の交際期間の中で、相手の男性の言動から婚姻関係が破綻したという嘘に気付けたはずだとして、「婚姻関係が破綻していた」との主張が認められないことが多いためです。

また、婚姻関係が破綻していると考えたことについて過失があるとされたときにも、慰謝料を支払う義務を負うことがあります。

なお、相手の妻に慰謝料を支払ったとき、慰謝料の一部を相手の男性にも求償請求できることがあります。

求償できる金額は、不貞行為に対する相談者と相手の男性の責任の割合によって決まります。今回のように、相手の男性が「ずっと別居しているし子どももいない」と嘘をついていたことなど、相談者が、相手の男性の言動により婚姻関係が破綻していると誤解してもやむを得ないような状況だったのであれば、男性側の慰謝料の負担の方が大きくなる可能性があります。   今回は、交際相手が既婚者だと判明した際の交際相手への慰謝料請求や、交際相手の配偶者からの慰謝料請求についてお話しました。しかし、実際に請求が認められるか、どの程度の慰謝料が認められるのかは、個別具体的な事情により異なります。交際相手の具体的な言動によっては婚約破棄を理由とする慰謝料請求についても認められる可能性があります。

既婚者であることを隠して交際していた相手が許せず慰謝料を請求したいとお考えの際には、ぜひお近くの弁護士までご相談ください。

プロフィール

瀧井 喜博
瀧井 喜博(たきい よしひろ)弁護士 弁護士法人A&P 瀧井総合法律事務所
「あなたの『困った』を『よかった』へ」がモットー。あらゆる「困った」の相談窓口を目指す、主に大阪で活動する人情派弁護士。自由と自律性を押し出す新しい働き方、楽しく成長し続けることができる職場環境として、「ブラック」でも「ホワイト」でもない「カラフル」な職場の構築、拡大を目指して、日夜奮闘中。

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