宗教をめぐるトラブルが原因で、離婚に発展してしまったーー。弁護士ドットコムにはこのような相談が複数寄せられています。
ある相談者は、結婚後に妻に「私をとるのか宗教をとるのか」と言われ、不本意ではあるものの、宗教を退会したそうです。しかし、退会後、妻に別の宗教をすすめられたことで怒りを覚え、離婚調停を申し立てたといいます。
一方、別の相談者は、妻と「新興宗教を脱退すること」を条件に結婚しました。しかし、妻は結婚後も退会せず、会合などに参加しているようです。相談者は「離婚できますか」と聞いています。
憲法20条は「信教の自由」を保障していますが、配偶者の宗教活動を理由とする離婚は認められるのでしょうか。橘里香弁護士に聞きました。
●「夫婦の信頼関係や円満な家庭生活に支障を生じた」か否か
ーー2人の相談者のように、信仰していた宗教を退会させられて別の宗教をすすめられたり、結婚後も相手が新興宗教を退会してくれなかったりすることを理由とした離婚は認められるのでしょうか
「判決が得られるかという観点からは、憲法上『信教の自由』が保障されていることもあり、単に『宗教を退会してくれない』ということだけでは十分とはいえないでしょう。
宗教に起因した具体的事情のもとで、夫婦の信頼関係や円満な家庭生活に支障を生じさせているという事情が必要になります。
具体的には、宗教を退会させられた際の発言や強要の程度、別の宗教をすすめられた際の勧誘の頻度や発言、拒否しているのに執拗に勧誘されたか、相手方の宗教活動で家庭生活にどのような具体的支障が生じているかなどが重要となります」
●家計や家事・育児に及ぼす影響次第では、考慮される可能性も
ーー実際に離婚が認められるのは、具体的にどのようなケースでしょうか
「家計に影響を与える程度の多額のお金を宗教に費やしている、宗教活動に熱中するあまり家事や育児が疎かにされているなどの事情があれば、婚姻関係破綻の事情として考慮されると考えられます。
宗教については『信教の自由』との関係で、夫婦間でも一定の理解や尊重が求められる部分ではあります。そのため、宗教が理由でなくとも、上記のような行為など、一般的にも婚姻関係に支障を生じさせるといえるような具体的事情を積み上げていくことが大切です。
また、夫婦関係が修復不可能であることを示す事実として、別居の実績も重要となると考えられます」