「扶養するのがいやだ、自由になりたい」。夫にそのように言われ、離婚を突きつけられた女性が途方にくれ、弁護士ドットコムに相談を寄せました。相談者は小さな子ども2人(4歳、2歳)を抱える妊娠中の専業主婦です。
「夫の要望で、これまで24時間・365日、親に子どもを預けたり、一時保育を利用したり、1人で出かけたりしたことはありません」と相談者はいいます。子どもの1人には、障害の可能性もあるとのこと。
一方、夫は「仕事」と嘘をつき、部下の女性と出かけたり、仕事帰りや土日にパチンコに行ったりすることも少なくないようです。
「夫は今のマンションを出ていくと言っていますが、家賃の7割を会社が補助しているため、困っています。お金ももらえず、体調が悪くとも病院に行けません。離婚はしたくないのですが、どうすればいいでしょうか」と相談者は聞いています。
相談者はどう対応すれば良いのでしょうか。西山良紀弁護士に聞きました。
●生活費の支払いを拒否されたら「婚姻費用分担請求調停」
ーー夫が家を出て行った場合、相談者はどのような対応を取ればよいでしょうか。
「まず、夫に対して、生活費(婚姻費用)の支払いを求めて下さい。また、役所に児童手当の受給者変更の相談に行ってください。
次に、夫から生活費の支払いを拒絶されたり、支払額で折り合いがつかないときは、婚姻費用分担請求調停の申立てを検討して下さい。
夫が公務員や大企業など安定したところで働いていれば、調停で決まった婚姻費用が支払われる可能性が高いでしょう。一方、夫が職を転々とするなど仕事が長続きしないタイプであれば、婚姻費用を回収できる可能性は低くなるので注意が必要です。
次に、支払われる生活費だけでは生活できない場合・生活費を支払ってもらえない場合、かつ、親族からの援助も期待できない場合は、生活保護の受給など役所に相談に行かれると良いでしょう」
●夫からの離婚請求「直ちに認められる可能性は極めて低い」
子どもが幼いこと、障害がある可能性があることなどは、請求できる婚姻費用を決めるうえで考慮要素となりますか。
「当事者間の協議で、子どもが幼いこと等を理由に相場より高い婚姻費を求めることは自由ですが、相談者の夫がそれを受け入れる可能性は極めて低いでしょう。
調停になった場合、子どもが幼いことは婚姻費用を増額する要素とはなりません。しかし、子どもに障害があり多額の医療費等を要するときは、婚姻費用を増額する要素になると思います」
夫の離婚請求が認められる可能性はあるのでしょうか。
「夫が浮気をしている証拠がなかったとしても、子どもが幼いこと、(現時点で)未だ別居に至っていないことなどの事情に照らせば、夫の離婚請求が直ちに認められる可能性は極めて低いと思います。
なお、現時点では離婚に応じないとしても、将来、自分にはどのような選択肢があるのかを検討するために、離婚した場合にもらえる児童扶養手当についても事前に調べておくとよいと思います」