夫が若い女性と混浴温泉旅行の計画を立てている――。サイバーエージェントが運営する女性向け匿名掲示板サービス「GIRL’S TALK」に投稿された相談が、ネットで話題になった。
相談者の女性(27歳)は昨年10月に結婚したばかり。ところが、夫は、会社の男性上司(2人)やその知人女性(3人)と一緒に、一泊二日の「混浴温泉旅行」にいく計画を立てているという。参加する女性の年齢は、24〜25歳だそうだ。
相談者は夫の携帯をのぞいたとき、メッセージアプリ「LINE」の履歴で、夫の旅行計画を知ったそうだ。LINEのグループチャットには、温泉旅館の大部屋にみんなで宿泊するような内容が書かれていた。つまり、男女同室ということだ。さらに、「美味しいもの食べて温泉入ろうね」「財布は置いてきていいよ」「えー楽しみードキドキするー」といった会話も残されていた。
このようなLINEの内容に対して、相談者の女性は「どーーーしても許せません」「角を立てずに辞めてもらうにはどうしたらいいのでしょうか」と悩みを打ち明けている。もし夫がこのまま温泉旅行に出かけた場合、妻が絶対に許せなくて「もう、離婚してやる!」と言ったら、認められるのだろうか。男女の問題にくわしい村上真奈弁護士に聞いた。
●男女混浴・同室だけでは「不貞な行為」とはいえない
「まず先に、相談者の女性が『旅行に行くのをやめないなら離婚だ!』と伝えて、夫が『OK』すれば離婚することができます。離婚は、当事者間で合意すれば、特に理由は必要ないからです」
夫が離婚に応じなかったら、どうなるのだろうか。
「この場合、裁判で、民法に定められた『離婚原因』を主張することになります。少し難しくなりますが、今回考えられる離婚の原因は次の2つです。
(1)配偶者に不貞な行為があったとき(民法770条1項1号)
(2)婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(同5号)」
それぞれどういうケースなのだろうか。
「(1)の『不貞な行為』というのは、『自由な意思に基づいて配偶者以外の人と性的関係を結ぶこと』をいいます。
今回の旅行は、男女混浴・同室とはいえ、会社の上司2名がいます。必ずしも性的関係を結ぶとはいえず、『不貞な行為』とは認められにくいでしょう。
もちろん、関係者が肉体関係を認めたり、LINE上で肉体関係を思わせる内容のものが出てくれば話は別です」
●「納得できるまで徹底的に話し合ったほうがいい」
では、(2)はどういうケースなのだろうか。
「夫婦関係が回復の見込みがない程度に破綻していると、(2)にあたると考えられています。
男女一緒の旅行でも、部屋が男女別々で入浴も別であれば、それほど不自然なことではないので、それが原因で『夫婦が破綻』とはいいづらいです。
たしかに、今回のケースは、男女混浴・同室、LINE上で若干怪しいやりとりがあります。普通の職場の旅行とは違うように思えます。相談者の女性にとっては非常に不愉快ですよね。
しかし、この旅行が一度きりでご夫婦間にほかに問題がなければ、『夫婦関係が回復の見込みがない程度に破綻している』とはいえない可能性が高いです。裁判所は、『破綻しているか』について、一時点の事実だけから判断せず、夫婦のいろいろな事情をみて判断します。
たとえば、この件をめぐって、(a)夫婦間で喧嘩を繰り返す、(b)夫がこのような旅行を今後も繰り返したり、参加者の女性と頻繁に遊びに行く、(c)夫婦間に性交渉がない、(d)夫が開き直って暴言を繰り返す、(e)別居する、などの事情が出てくれば、『夫婦関係が破綻し回復の見込みがない』と判断される可能性はあります」
村上弁護士はこのように法律的な説明したうえで、次のようにアドバイスしていた。
「相談者の女性は、『角を立てずに・・・』なんて考えず、納得できるまで徹底的に話し合ったほうがいいですよ。ぶつかり合うことを避けると、一方が我慢したり、理解し合えない夫婦になってしまいますからね」