2018年04月30日 10時22分

もしオーシャンビューの宿泊部屋がダブルブッキング、部屋替えなら慰謝料請求できる?

もしオーシャンビューの宿泊部屋がダブルブッキング、部屋替えなら慰謝料請求できる?
写真はイメージです(Kazuhiro Konta / PIXTA)

宿泊施設側の手違いで、「ダブルブッキング」をされ、本来泊まるはずの部屋を使えなかったとしたら、つらいもの。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、同様のケースで、宿泊費の返還請求や慰謝料請求ができるのかどうかといった相談がありました。

相談者の場合、ビジネスホテル側が誤って別の客に部屋を貸してしまい、予約した部屋とは違う部屋に宿泊せざるを得なかったそうです。支配人からの謝罪もなかったといいます。旅行でも仕事でも、行った先でのトラブルは極力避けたいところ。不幸にもこうした被害にあってしまった場合、どんな請求ができるのでしょうか。金子博人弁護士に聞きました。

●旅の目的達成できない部屋ならトラブルに

ーー多くの方にとって、どこの部屋に泊まるかは重要なポイントだと思われますが、いかがでしょうか

「はい。ホテルや旅館で、どこの部屋に泊まるかが重要なことは結構あるようです。例えば祭りでは、それが見える道路側の部屋がとれなければ、泊まる意味がなくなります。また、オーシャンビューの部屋とそうでない部屋では、価値が全く異なります。

このような場合、部屋を指定して予約していたのに、到着したら、そこが別の客に貸されてしてしまい、別の部屋を当てがわれたとなれば、旅の目的が達せられないという状況となり、トラブルのなるのは当然です。

このようなケースで、どのような解決があり得るか。直接の判例は判例集には見あたらないですが、東京地裁平成27年2月18日判決は参考になります」

ーーどのような裁判だったのでしょうか

「これは、旅行社の企画したパッケージツアーのケースで、次のような事案でした。旅行パンフレットには、『ホテルの敷地から人気のモン.サン.ミッシェル島の全景を眺めることができ、時間とともに姿を変える神秘的な景色を楽しむことができる』と記載されていました(モン.サン.ミッシェルは、世界遺産に指定されているフランスの有名な観光地)。

ところが、出発後、ホテルがダブルブッキングをしていることが判明し、ツアー参加者がそのホテルに泊まれないことに。原告は、宿泊の前日になって、このことを添乗員から知らされました。びっくりした原告は、経緯や理由の説明を求めたが添乗員から回答を得られず、納得できない原告は帰国後に本件訴訟を提起しました」

ーー判決はどういったことを認定したのですか

「ホテルの予約はツアーを募集した旅行社が行わず、専門業者に任せるのが普通で、このときもそうでした。となると、旅行社がダブルブッキングかどうかを把握するのは困難となるため、判決は、旅行社には旅行パンフレット記載のホテルに宿泊させる義務まではないとしました。

一方、宿泊不能の理由の説明を速やかにしなかったことに約款上の説明義務不履行があるとして、10万円の慰謝料の支払いを命じました。説明がないということは、旅行者を不安な気持ちにさせ、旅行を楽しみことができなくなるため原告に多大な精神的苦痛を与えたというのが理由です」

ーー確かに、原告にとってショックは大きいですね

「原告がこのツアーに参加したのは、このホテルに泊まれば、『敷地からモン.サン.ミッシェル島の全景を眺めることができ、時間とともに姿を変える神秘的な景色を楽しむことができる』とあるからであり、それができないとあれば、原告としては、参加した意味がなくなるという状況でした。

その場で納得のいく説明があれば、原告も我慢できたかもしれませんが、それがないため、裁判所としては、今回の旅が『台無し』となったというのでしょう。慰謝料10万円というのは、合理的な判断だと思われます」

●直接申し込み、ホテルに宿泊させる義務

ーー今回のように直接申し込んだケースはどう考えられますか

「この判例理論からすると、旅行者が直接ホテルに申し込んだ今回のケースでは、ホテル自体に、そこに泊まらせる義務があるということになるでしょう。従って、別の部屋に変更させられれば、原則として、債務不履行となるでしょう。その損害額は、余分な宿泊料などの実損が発生しない限り、慰謝料10万円程度だと考えられます。

その部屋に泊まれないことが、ダブルブッキングでなく、セキュリティの理由など正当な理由があっても、説明が不十分で宿泊者が納得できなければ、旅の楽しみを台無しにしたという理由で、慰謝料の賠償義務が発生すると考えることもできるでしょう。

最後に、部屋の指定は明確にするとともに、ホテルから、確かにそこに泊まらせるという明確な回答を得ておく必要があることを指摘しておきたいと思います。この点の確認が曖昧で、ホテルとしては、『可能な限り希望に添うよう努力する』と回答しただけだと逃げられると、法的な責任追及は困難となります」

(弁護士ドットコムニュース)

金子 博人弁護士
「金子博人法律事務所」代表弁護士。国際旅行法学会の会員として、国内、国外の旅行法、ホテル法、航空法、クルージング法関係の法律実務を広く手がけている。国際旅行法学会IFTTA理事。日本空法学会会員。

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