中高生などがインターネットで知り合った相手に脅されたり、だまされたりして、自分の裸を撮影しメールなどで送るよう求められる「自画撮り」の被害が増えている。こうした状況を受けて、東京都は、画像を求めた段階でも取り締まりができるよう検討を始めた。
警察庁によると、自画撮り被害にあった児童は、2012年に207人だったが、2015年には376人と毎年増加している。被害の半数以上が中学生で、高校生も約4割を占めている。インターネットで知り合った面識のない相手から求められるケースが多いという。
東京都は「都青少年健全育成条例」の改正を含めて、画像を求めた段階での取り締まりを検討している。実現すれば、全国で初めての「規制」となる。現行の法律では、なぜ取り締まれないのか。条例改正で対応すべきなのか。児童ポルノの問題にくわしい奥村徹弁護士に聞いた。
●「自画撮り」が、児童ポルノの最大の供給源になっている
「まず、児童(18歳未満)に頼んで、裸の写真を撮影・送信してもらう場合、どんな法律が適用されるか検討しておきます。
児童を脅迫して、撮影・送信させる場合、『児童ポルノ製造罪』+『強要罪』『強制わいせつ罪』として処罰されています。また、送信させなくても、『強要未遂罪』『強制わいせつ未遂罪』として処罰可能です」
脅迫などではない形で、裸の写真を撮影・送信させた場合はどうだろうか。
「児童ポルノの『製造罪』は、児童自身が、製造主体となる場合も含みます。理論上、厳密にいえば、児童が『提供目的製造罪』(児童ポルノ禁止法7条3項)や『提供罪』(同条2項)にあたります。一方で、頼んだ人はその共犯になるはずです。(広島高判・平成26年5月1日、神戸地判・平成24年12月12日)。
しかし、それでは、被害者自身が処罰されることになって不都合だというので、実務では、児童を検挙せずに、頼んだ人だけを『製造罪』(児童ポルノ禁止法7条4項)の単独犯として検挙するのが一般的になっています。
そうなると、児童による撮影・送信は、取り締まられないことになるので、児童の自画撮りが、児童ポルノの最大の供給源になっているのです。そこで、東京都は、撮影・送信を依頼する行為を青少年条例で規制しようとしているのです。
撮影・送信を依頼する行為は、本来の解釈でいえば、『提供目的製造罪』や『提供罪』の教唆犯となります。もしくは、各地の青少年条例の『わいせつ行為』として処罰可能でしょう。
しかし、児童を『製造罪』の正犯とすることへの抵抗感や、東京都条例では、青少年への『わいせつ行為』が処罰されないことなどから、条例の改正が必要になったものと察します」
東京都が検討しているように、条例改正で対応すべきだろうか。
「そもそも、被害者である児童自身を『製造罪』の主体に含める『児童ポルノ法』の矛盾があります。それでいて、児童を『製造罪』で検挙しない(児童に製造の禁止を命じない)という実務では製造源を断つことはできません。
そのうえ、インターネット上の問題を条例で規制する場合の実効性の問題もあります。法律を改正して、『未遂罪』や『勧誘罪』などを検討すべきだと思います」