海外の無修正アダルト動画サイト「カリビアンコム」でわいせつ動画を配信したとして、東京都内のAV制作会社「ピエロ」の社長ら6人が、わいせつ電磁的記録頒布の疑いで1月11日に逮捕された。
産経ニュースの報道などによると、動画は日本国内で撮影。台湾にある別会社が内容の調整や動画の納品を行い、カリビアンコムで配信されていたという。この別会社から、ピエロ側に支払われた金額は約9年間で約13億7000万円になるそうだ。
警察は今後、国際刑事警察機構(ICPO)を通じ、台湾やカリビアンコムの運営会社があるアメリカの捜査機関と連携し実態解明を進める方針を示している。
いわゆる「無修正」AVの配信は日本国内では禁じられているが、カリビアンコムがあるアメリカでは禁じられていない。逮捕された社長たちは、日本で配信したわけではないのに、どうして逮捕されてしまったのだろうか。奥村徹弁護士に聞いた。
●海外サイトを国内法で違法とできる仕組みがある
アメリカでは児童ポルノ以外のアダルト画像(動画)に対する規制は弱く、日本刑法でいうわいせつ画像(刑法175条1項)を配信することも、そういうサイトに商品として提供することも適法と思われます。アメリカ国内では適法となる行為に、どうして日本刑法が適用されて検挙されるのかという問題があるわけです。
実はこの点については、最高裁の最近の判例(最決H26.11.25)で解決されています。判例の論理は、まず、撮影・編集した画像(動画)をアメリカの業者に送信した日本国内の者とアメリカでダウンロード販売している者とを「共同正犯」(共犯)としてひとくくりにします。
次に、日本人向けのダウンロード販売サイトというのは、購入者がクリックするなどの簡単な操作をするだけで、自動的に購入者にデータが送信されて保存されるのだから「有償頒布」にあたると評価しています。
さらに、日本国内の購入者の端末にデータが送信され、保存されたという部分に着目すると、それは日本国内で行われているので、日本刑法が適用されるというわけです。また、このようなサイトで販売する目的で撮影・編集した者には「有償頒布目的所持罪」(刑法175条2項)も成立するといいます。
この判例があるので、今回も同様の外国サイトについて、撮影した日本国内の関係者が「共犯者」として検挙されたと思われます。他にも検挙事例がありますので、今後この業態についてはさらに検挙される可能性があります。
問題点としては、アメリカにいる関係者は、自国の刑法に照らして適法な行為をしているのに、日本刑法では共犯者とされているので、日本国内に入ると検挙されることになり、アメリカにおける表現の自由に影響するのではないか、他国の風俗・文化政策に対する過度の干渉になるのではないか、などの点があります。
この判例の理屈によれば、海外であっても「無修正サイト」の頒布行為に関与していれば、どこで撮影しても、どこで編集しても、どこでアップロードしても、日本刑法が適用されることになります。また、同種のサイト経営者が日本国内に来た場合には、検挙される可能性はあると思います。