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タクシー「心霊スポットツアー」不吉なことが起きたら、責任を取ってもらえる?
三和交通「心霊ツアー2016」のホームページより

タクシー「心霊スポットツアー」不吉なことが起きたら、責任を取ってもらえる?

「霊感の強い方はお控えください」。横浜のタクシー会社が企画している夏限定の「心霊スポット巡礼ツアー」は、こんな注意書きが出るほど、恐怖に包まれるようだ。

ツアーでは、タクシー運転手が横浜周辺の心霊スポットを案内する。今年は多魔(多摩)と東京が新たにコースに追加され、昨年よりも「怖さが若干パワーアップ」しているそうだ。公式サイトにはモザイク入りで「事故死者彷徨う某トンネル」「老婆がたたずむ某神社」など、ツアーのポイントが紹介されている。

サイトには「最初に安全の保障について一筆いただくことになります」、「霊感の強い方は参加をお控えください」などの注意喚起がある。

もし、ツアーに参加した後、参加者が事故に遭うなどの不吉なことが起きたり、参加したことがトラウマになって、精神的に病んでしまったりするなどの異変が起きた場合、タクシー会社の責任を問うことは可能なのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。

●「タクシー会社に帰責性や過失を認めることは難しい」

「本記事のタクシー会社のHPを拝見しましたが、世の中には色々なことが商売のネタになるなという印象を受けました。

今回の心霊ツアーで、『万が一のことがあった場合』の法律問題ですが、結論的に言えば、あくまで自己責任の問題であり、損害賠償請求等は難しいということになります」

西口弁護士はこのように述べる。どういった理由があるのか。

「民法の規定にしたがうと、債務不履行(契約で定めた義務を果たさなかった)にあたるか、もしくは不法行為(ツアーに参加した人の権利を不法に侵害した)にあたれば損害賠償請求をすることができます。

しかし、今回のようなケースで、仮にツアー参加者に不吉なことがあっても、タクシー会社に帰責性や過失を認めるのは難しいと思います。

そもそも、『不吉なことが起きたことは、ツアーに参加したことが原因だ』と証明することは難しいでしょう」

参加者が、「こんなに怖いとは思わなかった、トラウマになった」と主張した場合はどうだろうか。

「仮にタクシー会社に説明が不十分であったような場合、たとえば、HPで記載されているよりも怖すぎる場合については、『説明義務違反』という帰責性を認める余地はあります。

ただし、それによって被害が発生することについては、常識的に考えて繋がってこないので、因果関係が否定されるかと思います。

民法自体、『公平』という観点から損害賠償請求の範囲を限定しているのです。

以上のように法律論を書いてみましたが、このようなツアーに参加することは自己責任の問題です。ハートが弱い方は興味本位で参加しないということも大切ですね。個人的にはツアーに参加するのはやめておきます」

西口弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

西口 竜司
西口 竜司(にしぐち りゅうじ)弁護士 神戸マリン綜合法律事務所
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。

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