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フェイスブックのタグ付けで「接近禁止命令」違反――日本の法律だったらどうなる?
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フェイスブックのタグ付けで「接近禁止命令」違反――日本の法律だったらどうなる?

被害者とコンタクトを取らないよう、裁判所から命令されていたのに、フェイスブックで「タグ付け」の投稿をおこなうと、命令違反となる――。米ニューヨーク州の裁判所がこのほど、このような判決を下した。

ニューヨーク・ロー・ジャーナルなどによると、マリア・ゴンザレスという女性は、義理の妹とコンタクトをとっていけないという保護命令(接近禁止命令)を受けていた。ところが、この女性は、フェイスブック上で義理の妹を「タグ付け」したうえで「愚かだ」なとど投稿したという。

現地の裁判所は、フェイスブックのタグ付けによって「相手に通知を送ることになるので、保護命令に違反することになる」という判断を示した。この女性は最長1年の懲役刑を科される可能性があるという。

日本でも、DV防止法などで「相手と連絡をとらないように」という保護命令がある。はたして、今回のケースのように、フェイスブックで「タグ付け」した場合も、命令違反にあたるのだろうか。大和幸四郎弁護士に聞いた。

●現行法上、日本では保護命令に違反しないが・・・

「DV防止法では、配偶者や交際相手との連絡を禁止する保護命令(裁判所)があります。また、ストーカー規制法では、『つきまとい』を禁止する命令(警察)が定められています。

これらの趣旨は、加害者が『接触』すると、恐怖心や心理的ダメージを与えるので、それを防止することで被害者を保護する点にあります」

大和弁護士はこのように述べる。もし、保護命令や禁止命令を受けた人が、フェイスブックで「タグ付け」の投稿をした場合、どうなるのだろうか。

「一般的に、『接触』とは、連絡をとることです。実際に会うことだけでなく、手紙や電子メールを送ることも含まれます。

しかし現在、DV防止法とストーカー規制法では、『電子メールを送信すること』は規制されていますが、フェイスブックやラインなど『SNS』を含むとはされていません。実際の運用もそのようになっています。

したがって、日本で同じようなことがあっても、『保護命令』や『禁止命令』に違反しないと思います。

一方、あくまで私見ということで述べますが、現在のSNSの普及から考えると、SNSを通して執拗にメッセージを送りつけたり、今回のケースのように、フェイスブックのタグ付けによって、相手に通知を送ることについても規制していくべきだと思います。

なぜなら、このような行為によっても、被害者に恐怖心や心理的ダメージを与えると考えられるからです」

大和弁護士はさらに「無許可のタグ付けにも注意が必要だ」と付け加えていた。

「誰にも公開されたくない情報があります。公開されるだけでも不快なのに、わざわざタグ付けするのは、傷口に塩をぬるような行為です。


フェイスブックの設定にもよりますが、写真などへのタグ付けによって、ある人のある日の居場所や行動が明らかになり、その人のプライバシーが露わになることもあります。場合によっては、『プライバシー権侵害』として、慰謝料を請求される可能性もあります」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

大和 幸四郎
大和 幸四郎(やまと こうしろう)弁護士 武雄法律事務所
佐賀県弁護士会。2010年4月~2012年3月、佐賀県弁護士会・元消費者問題対策委員会委員長。元佐賀大学客員教授。法律研究者、人権活動家。借金問題、相続・刑事・男女問題など実績多数。

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