カーシェアサービス「タイムズカー」で、約660万アカウント分の個人情報が漏えいした問題は収束する気配がありません。
タイムズカーを運営するタイムズモビリティ社の親会社であるパーク24の発表によると、漏えいしたアカウントのうち、160万アカウント分には、運転免許証画像などの本人確認書類情報が含まれるとされています。
10月6日午前10時現在では、この漏えいによって、不正利用を受けたなどの報告はありませんが、不正利用を防ぐために被害者自身ができることはあるのでしょうか。また、実際に不正利用されたらどう対処すればよいのでしょうか。解説します。
●様々なリスク——勝手な契約と、巧妙な詐欺に注意
漏えいした情報のうち、特に深刻なのが本人確認書類の画像です。
たとえば運転免許証の画像は、本人になりすましてローンやカードを申し込んだり、銀行口座を開いたりするために悪用されるおそれがあります。
たしかに、オンラインの契約では運転免許証の画像だけではなく、自分の顔を撮影して送る確認もあるため、画像だけで必ず契約できるわけではありません。
しかし、2026年3月には、免許証の画像に別人の顔を重ねた偽装データで顔認証をすり抜け、他人名義の預金口座を開いたとして20代の男が逮捕されたと報じられています。
このようにして勝手に契約をされても、本人が申し込まず、誰にも契約する権限を与えていないなら、その借入れについて本人は返済義務を負わないのが原則です。
それでも、請求を止める説明や、誤った信用情報を訂正する負担は生じます。身に覚えがないのに一部でも支払うと、契約を認めたと受け取られかねません。
また、流出した情報をもとに、会社や警察を装う連絡が来ることもあります。相手が自分の氏名や住所を言い当てたとしても、本物とは限らないことに注意が必要です。
タイムズモビリティには、個人情報を安全に管理し、今回のような漏えいでは個人情報保護委員会へ報告し、本人へ通知する義務があります。
ただ、タイムズモビリティからの通知や警察への報告があっても、別の会社で勝手に結ばれる不正な契約が自動的に防げるわけではありません。
●タイムズモビリティの責任は?
まず、漏えいそのものによる精神的苦痛について慰謝料を請求できる場合もあります。
ただし過去の漏えい事件で認められた額は、1人あたり数千円から数万円という例が多いのが実情です。免許証の画像まで漏れた今回のような事案でどう判断されるかは、まだ分かりません。
なお、タイムズモビリティによる10月1日付のFAQでは、補償の方針は外部の専門機関による調査結果を踏まえて決めるとしています。
次に、悪用による被害が出た場合には、これとは別に損害賠償請求の余地があります。
ただし、悪用による被害が出たとしても、タイムズモビリティに直ちに賠償責任が生じるわけではありません。
漏えいから被害までの間には第三者の犯罪行為が介在しているため、タイムズモビリティの情報管理に過失があったとしても、その過失と被害との因果関係は個別の事情に即して検討することになります。
犯罪行為が介在したという理由だけで、タイムズモビリティの責任がなくなるわけでもありませんが、直ちに全額請求できるわけでもないことには注意が必要です。
●「本人申告」と、記録を残すこと
まず、タイムズカーの公式窓口で自分のどの情報が漏れたのかを確認しましょう。
タイムズを装う詐欺メールも想定されるので、届いたメールのリンクは使わず、自分で公式サイトを開くのが安全です。
免許証画像などが漏れた人は、CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターへの「本人申告」を検討してください。
これは、カード会社や金融機関が審査のために照会をかけたとき、「この人(被害者)の本人確認書類が漏えいしているのでなりすましに注意してほしい」という情報が伝わるようにしておく、という意味です。
それぞれ別機関ですので、手数料はかかりますが、3機関それぞれへの申告をした方がよいでしょう。
ただし、本人申告をしたからといって、不正契約を必ず防げるわけではありません。また、全国銀行個人信用情報センターは、預金口座の開設時には照会が行われないと明記しています。
●身に覚えのない請求がきたら?

身に覚えのない不正請求が来た場合、絶対に応じないでください。
一部でも支払ってしまうと、業者から「追認したから契約は有効だ」などと主張されてしまうリスクがあります。
また、放置せず、請求元に不正請求だと伝え、停止や調査を求めるのがよいでしょう。
ただし連絡をする際には、請求書やメールに書かれた連絡先は使わず、請求元の公式窓口を自分で調べてください。請求書に書かれた連絡先自体が、詐欺の入り口であるおそれがあります。
さらに、裁判所から書類が来た場合には、身に覚えのない不正請求であっても、期限内の対応が必要です。放置すると敗訴してしまうリスクがあります。
弁護士や、警察、消費者ホットライン(188)に相談してください。
漏えいの通知、請求書、対策費用の領収書は保存してください。後々重要な証拠になる可能性があります。
小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)