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れいわ新選組「偽の応援サイト」作成者の法的責任は? 蒼井優さんら「事実無根」と表明
蒼井優さん(写真:アフロ)

れいわ新選組「偽の応援サイト」作成者の法的責任は? 蒼井優さんら「事実無根」と表明

俳優の蒼井優さんや山本美月さん、加藤清史郎さんらが「れいわ新選組」を応援しているかのような虚偽のコメントを掲載した偽の応援ブログサイトが出現し、サイトのスクリーンショット画像がXで拡散している。

蒼井さん、山本さんらの所属事務所は「事実無根」などと否定。れいわ新選組も11月10日、「全く承知しておらず、そのような事実もない」「れいわ新選組や代表山本太郎とは全く関係がなく、内容も承知しているものではありません」と注意を呼びかける声明を発表した。

虚偽の応援サイトでは「私がれいわ新選組を支持する理由」などとして、蒼井さんらのコメントを装って掲載されていた。このサイト作成者は、どのような法的責任を問われる可能性があるのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。

●「プライバシー侵害に該当する」

——どのような法的責任を問うことができますか

サイトにおいては、芸能人らが、れいわ新選組に対する応援コメントをしていたかのような表示をしていたようですが、れいわ新選組はもちろん、芸能人らも与り知らない内容とのことのようです。

芸能人らからすれば、虚偽の政治信条を表明されたという状況です。政治信条がどのようなものかというのは本人の意思に反して表明されるべきものではないので、プライバシー情報として保護される対象といえます。

プライバシーにあたるものとしては、私生活上の事実だけでなく、事実らしく受け取られることも含まれています。そのため、このような虚偽の情報であってもプライバシーとして保護されることになります。

したがって、芸能人らからすれば、プライバシー侵害を理由にして、サイト開設者を特定したり、責任追及をしていく余地があります。また、芸能人の写真などを勝手に使っている場合には、肖像権侵害や著作権侵害などになる可能性もあります。

●刑事上の責任は?

——刑事上の責任を問うこともできるのでしょうか

プライバシー侵害や肖像権侵害は刑事上の問題にすることはできませんが、著作権侵害といえる場合であれば、刑事上の責任を追及する余地があります。

他方で、れいわ新選組に関しては、虚偽の情報を拡散されることは非常に迷惑といえるとは思いますが、形式上、応援を受けているという立場であり、何らかの権利侵害を受けたという状況がありません。

そのため、れいわ新選組としてサイト管理者に対して責任追及することは少々難しいといえそうです。ただし、本来必要なかったリリースを出すなどの作業を強いられており、その意味で偽計業務妨害罪と構成する余地はあるかもしれません。

なお、れいわ新選組に対しては、代表の山本太郎氏を装って投資勧誘を誘うサイトも作成されているようです。これは、昨今問題とされている、有名人を勝手に用いた投資詐欺的なものではないかと思料されます。

これについては、詐欺に関与しているかのような外観が作出されているという点で、社会的評価を低下させるものといえ、名誉毀損といえるのではないかと思われます。その場合、民事上、刑事上の責任追及をしていくことができる余地があります。

プロフィール

清水 陽平
清水 陽平(しみず ようへい)弁護士 法律事務所アルシエン
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022~2023年) の構成員となっている。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を行っている。

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