DeNAやグリーなど、近年急成長を遂げたソーシャルゲーム企業の大きな収益源となっている「コンプリートガチャ」の仕組みが、景品表示法に抵触する可能性があると報じられている。もし同法に抵触することになった場合、ソーシャルゲーム企業およびユーザーにはどのような影響があるのだろうか。
今回問題になっているコンプリートガチャとは、ユーザーが「ガチャ」というランダムでアイテムを入手することができるサービスを通じていくつかの特定のアイテムを揃えることで、より希少なアイテムを入手することができる仕組みのことだ。ガチャには一部無料なものもあるが、多くの場合1回の利用につき300円程度の課金が発生する。ガチャで手に入るアイテムはランダムに決まるため、目当てのアイテムを揃えるまでに数万円以上の金額がかかる可能性もあり、これまでもユーザーの射幸心を煽る仕組みになっているという批判がされてきた。
一方、ソーシャルゲーム企業においてはこのような課金の仕組みが各社の急成長を支えており、DeNAが運営する「モバゲー」の「アイドルマスター シンデレラガールズ」や、グリーが提供する「探検ドリランド」などの人気ゲームにコンプリートガチャの仕組みが導入されている。
コンプリートガチャは景品表示法に抵触するのか、インターネットビジネスに詳しい福井健策弁護士に話を聞いた。
「違法な景品類の提供法を定めた公正取引委員会の告示のうち、いわゆる『カード合わせの全面禁止』(※2つ以上の種類の文字・絵等を表示した符票(当たり券)のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを揃えることを条件とした景品類の提供)への該当性が問題になるでしょう。通常のカード合わせは、進むにつれて次の1枚が揃う確率が低下します。そうした当選確率について誤解を与えやすい点がかつて社会問題になり、設けられた禁止規定ですね。」
「コンプガチャの場合、具体的には、ガチャで得られる各アイテムは『符票』か、その組合せで得られるレアアイテムは『景品類』(経済上の利益)か、が問題になります。」
「電子データに過ぎない各アイテムが『符票』なのか、レアアイテムのメリットもゲーム上の優位性に過ぎないが、それでも『経済上の利益』と言えるのか、やや微妙な解釈です。もちろん具体的なガチャの内容にもよりますが、紙のカード合わせと同様に確率について誤解を与えやすく、現実に社会問題を生じ得る点を重視するならば、違法な景品提供と判断されるでしょう。」
現時点で消費者庁は見解を明らかにしていないが、今後の展開次第ではソーシャルゲーム企業は課金の仕組みを見直す必要に迫られるばかりではなく、コンプガチャは違法だとして、多数のユーザーから費やしてきた利用料金について返金請求をうける可能性さえ指摘される。
ソーシャルゲーム企業にとっては経営を根底から揺るがしかねない問題で、既に関連銘柄の株価が一連の報道後に下落するなど、市場にも緊張感が漂い始めてきた。