ジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBS記者の山口敬之さんからの性暴力被害を訴えた事件を巡り、伊藤さんを誹謗中傷するツイートに「いいね」を押したことが伊藤さんの名誉感情を侵害したとして、自民党の杉田水脈衆院議員に慰謝料など220万円の支払いを求めた訴訟の判決が3月25日、東京地裁であった。
武藤貴明裁判長は、「いいね」は肯定的・好意的な感情を示す以外の目的で用いられることもあるうえ、それ自体からは感情の対象や程度を特定できないなどとして、「いいね」を押した行為の不法行為を認めず、伊藤さんの請求を棄却した。
●判決の内容
判決文によると、杉田議員は2018年6月28日に英BBC放送で放送された伊藤詩織さんを取り上げた番組で批判的なコメントを述べ、その後ブログやツイッターでも伊藤さんに関して批判的なコメントを述べた。
その後、杉田議員は6月30日〜7月18日にかけて、伊藤さんについて「枕営業の失敗」「彼女がハニートラップを仕掛け(た)」などと投稿した他人のツイートを「いいね」した。
伊藤さんは、伊藤さんの名誉感情を侵害する内容のツイートに「いいね」を押すことで、杉田議員が積極的・肯定的評価を宣明したと指摘。衆議院議員で多数のフォロワーがおり、公開の場で数多くのツイートに「いいね」を押したことは、「社会通念上許される限度を超えた名誉感情侵害行為」と主張していた。
一方、杉田議員は、「いいね」は必ずしも積極的・肯定的評価を宣明するものとは受け止められておらず、ブックマークのために「いいね」を押したにすぎないなどと反論していた。
●伊藤さん「裁判所がセカンドレイプを許している」
判決後、会見を開いた伊藤さんは「当事者としては、ナイフを突きつけられるような感覚をずっと感じてきた」と振り返った。
「これまで杉田議員は100件以上関連ツイートにいいねをしていて、今回裁判の中で25件ほど抽出して争ってきた。目を通さないようにしていたけど、今回久しぶりに向き合って、この言葉たちが誹謗中傷にあたらないのかな、というのが驚くものたちでした。判決を受けて、正直なところ、裁判所がセカンドレイプを許しているような気持ちになりました」
代理人の佃克彦弁護士は「甚だ遺憾で承服できない内容。裁判所は25件のいいねは執拗に繰り返されたわけではないというが、どこまでいったら執拗と言えるのか。一連の言動活動の中のいいね行為が評価されなかった」と批判。控訴する方針を示した。
杉田議員の事務所は「妥当な判決だと受け止めております」とコメントした。