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「いまの交通取締はちょっと・・・」国家公安委員長の「苦言」 弁護士はどう見る?
古屋圭司国家公安委員長が警察の「交通取り締まり」について述べた発言が波紋を呼んでいる

「いまの交通取締はちょっと・・・」国家公安委員長の「苦言」 弁護士はどう見る?

「歩行者が出てくる危険もない直線道路で、制限速度の20キロ超過を取り締まるのは、ちょっとどうかと思う」。古屋圭司国家公安委員長が警察の交通取り締まりについて述べた発言が報道され、波紋を呼んでいる。

交通取り締まりについて、警察庁を管理する国家公安委員会の大臣が「取り締まりのための取り締まりになっている傾向がある」と発言した重みは大きい。古屋大臣の発言に対し、ネットでは「良く言ってくれた」という共感の声も多く見られる。「不公平だ」と感じている人が、それだけ多くいるということかもしれない。

事故を減らすという目的からすれば、取り締まりは不可欠のはずだが、多くの人がその正当性を疑うような現状は大問題だろう。「ドライバーが納得できる取り締まりが必要だ」とする古屋大臣発言をどう捉えればいいのか。「歩行者不在」の直線道路が比較的多い北海道で開業する足立敬太弁護士に聞いた。

●大臣発言には「うなずける」点がある

「『取り締まりのための取り締まり』という発言で、古屋大臣が念頭に置いているのは、『交通違反が特に危険な』場所よりも、『警察が検挙しやすい』場所で、優先的に取り締まりが行われているように見える点を指しているのだと思います。

覆面パトカー・ねずみ取り・オービスなどの取り締まりが、物陰に隠れやすく運転者に見つかりにくい場所や、どちらかというと危険性が低く、運転者がスピードを出しがちな場所でばかり行われているとすれば、検挙された人はどう感じるでしょう」

納得はできない。

「そうですね。自らの違反を反省するどころか、『だまし討ちにあった気分だ』『他の運転者もやっているのになぜ自分だけ?』という反感や不公平感を抱くようになります。

つまり運転する人の意識が『今後違反をしないようにしよう』ではなく、『今後違反は見つからないようにやろう』になってしまい、取り締まりの目的からすれば逆効果です。そういう意味で古屋大臣発言にはうなずける点があります」

ただ、そうはいっても、そもそも交通違反をすれば事故を起こす確率は高まる。その点にまで、反論がある人は少ないだろう。

「そうですね。特に速度超過は、運転ミスを誘う・重大な結果を招くなど危険な側面があります。

たとえば北海道では、凍結した雪道を走行する冬季の事故死者数よりも、走りやすい夏季の事故死者数のほうが多いという統計があります。これは速度超過が一因と言われています」

なるほど、一見、より安全に思えても、「実は危険」というケースもあるということだ。そうであれば、警察はきちんとしたデータを公表して、なぜその時、その場所で取り締まりが行われたのかをきちんと示すことで、運転者に不公平感を抱かせないよう配慮をしていく必要があるのではないか。

足立弁護士も「道路交通の安全確保という趣旨に立ち返り、取り締まりのあり方を見直す時期に来ていると思います」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

足立 敬太
足立 敬太(あだち けいた)弁護士 あい弁護士法人富良野・凛と法律事務所 旭川OFFICE
北海道・富良野在住。投資被害・消費者事件や農家・農作物関係の事件を中心に複数の分野を取り扱う。「常に相談者・依頼者様の視点に立ち、分かりやすい説明を心がけています」

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