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「21歳の家出娘」が起こした交通事故 父親が責任を取る必要はあるか?

「21歳の家出娘」が起こした交通事故 父親が責任を取る必要はあるか?

昔も今も「子どもが起こしたトラブルの責任は親にある」という考えは根強い。未成年の子どもが事故や事件を起こしたとき、保護者の責任が唱えられるケースはままある。しかしながら、子どもが成人した場合でも、親は責任を取る必要はあるのだろうか。

弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」に、21歳の娘がいるという父親から次のような相談が寄せられた。

「4年前に家出した娘が、無免許にもかかわらず知り合いの車を借りて運転し、物損事故を起こしました。その後、修理代を払うと約束しながら逃げてしまい、車の持ち主から『どうしたら良いですか』と連絡がありました」

現在は「娘と連絡が取れない状態」という父親。「このまま娘が修理代を払わなければ、親の僕が払う法的な義務があるんでしょうか?」と困惑している。はたして成人になってまもない娘が起こした事故の責任を、親が負う必要はあるのだろうか。森田英樹弁護士に聞いた。

●親の監督責任が問題となるのは、子どもが「12歳」よりも小さいとき

たとえば、小さな子どもが花瓶を落として割ってしまった場合のように、実際に損害を与えた者に責任を負わせるのが適切でない場合は、その監督義務者(通常は子どもの親)が賠償責任を負うことになっている。

森田弁護士によると、「民法714条1項には、『責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う』と書いてあります」ということだ。これは、小さな子どものように法律上の責任を負うことができない者(責任無能力者)の行動によって生じた被害を、公平に負担してもらおうという狙いで作られた規定だという。

ひらたく言えば、親には子どもの監督責任があるというわけだ。では、その場合の「子ども」とはどれくらいの年齢なのか。森田弁護士は「12歳あたりが分水嶺とされています」と指摘する。「ましてや、成人になった娘の引き起こした事故の責任を、親が負うことはありません」。つまり、つまり子どもが成人している場合、親が監督責任を負う時期はとうに過ぎている、ということだ。

●娘と連絡が取れない場合、「詐欺」の可能性がある

森田弁護士からすれば、21歳の娘が起こした今回の物損事故の賠償について、親が肩代わりする必要はない。むしろ、いわゆる「振り込め詐欺」のような悪質な詐欺の可能性すらあるという。

「人間関係の希薄化が進み、無縁社会と呼ばれるような寂しい世の中になりつつあります。娘さんが家出して連絡も取れないという状況だったら、詐欺を疑ってみる必要があるでしょう。電話連絡してきた者の単独犯行か、あるいは、家出した娘さんが詐欺に加担している可能性も否定できません」

そのような観点から、森田弁護士は「もし電話が家にかかってきたのであれば、『事故の届出を警察に出しましたか? 娘の連絡先は知っていますか? 一度、弁護士に相談します』と言ってみることをオススメします」と話している。

日本では、子が罪を犯した場合、その親の責任を追及する空気が強くなりがちだ。しかし法律的には、親が息子や娘の責任を負う必要はないといえるのだ。こういう事実をしっかり認識したうえで、不当な要求に対しては毅然と立ち向かっていけなければならないだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

森田 英樹
森田 英樹(もりた ひでき)弁護士 森田英樹法律事務所
現在は通常の相談業務だけでなくインターネット相談に力を入れ、あらゆる層からの相談に応じている。また、講演会などの活動も積極的に行っている。

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