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「キラキラネームは採用しません」 独特の選考基準は「不当な差別」ではないか?
キラキラネームだからという理由で、不採用にすることは「不当な差別」にあたらないのだろうか?

「キラキラネームは採用しません」 独特の選考基準は「不当な差別」ではないか?

「自営業です。キラキラネームは採用しません」――。フリガナがないと読むのが難しい、ユニークな名前のことを俗に「キラキラネーム」と呼ぶが、そういう名前の応募者は採用しない方針だというコメントが、弁護士ドットコムが5月に配信した記事に対して投稿された。

コメントの投稿者は「うちに面接にきたキラキラネームの人は、100%自己中で、採用を断ったら親が出てきて、『うちの子の何が気に入らないのか?』とモンペアされました」と記している。さらに、「キラキラネームを付ける親が自己中、自己顕示欲が強く協調性がないので、子も然り。名は体を表す・・・は本当ですよ」と持論を展開している。

採用するかどうかを決めるのは、基本的に雇用主の自由で、採用拒否の理由はいろいろあるだろう。しかしこのように、応募者の名前が「キラキラネームだから」という理由で不採用にするのは、「不当な差別」にあたらないだろうか。靱純也(うつぼ・じゅんや)弁護士に聞いた。

●「キラキラネーム」であることを理由に不採用としたとしても、「違法」ではない

「キラキラネームであることを理由に不採用とすることは極めて不合理だと思いますが、現状では直ちに違法とすることは難しいと思います」

靭弁護士はこう説明する。その理由は、次のような最高裁の判例があるからだという。

「自己の営業のために労働者を雇傭(こよう)するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができる」

つまり、どのような人間を採用するかどうかを決めるのは、基本的に雇用主の自由であると、判例は示しているわけだ。

すなわち、性別による採用差別など、法律等により禁止されている場合でないかぎり、「不合理な採用基準」と応募者が思ったとしても、雇用主の法的責任を問うことは難しいといえそうだ。

●採用後は、キラキラネームであることを理由とする不当な取扱いは許されない

では、「法の下の平等」をうたう憲法の精神に反しているとはいえないのだろうか。

「たしかに、憲法第14条は不当な差別を禁止していますが、憲法は国などの公権力を規制するもので、私人である企業などを直接規制するものではありません。

また、厚生労働省はできるだけ客観的かつ公正な評価を行うよう呼びかけていますが、これにしたがわなくても直ちに違法とはいえません」

このように、キラキラネームであることを理由に不採用としたとしても、いまのところ規制する法律がないため、違法とまではいえないのが現状ということだ。もしも、キラキラネームに対して偏見を持っている雇用主や面接官だったら・・・・。

もっとも、これは採用時の話だ。「採用後になって、キラキラネームであることを理由とする解雇や昇進差別などの不当な取扱いは許されません」(靭弁護士)ということだから、もし、心あたりのある方はこの点は頭の隅に入れておくとよいだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

靱 純也
靱 純也(うつぼ じゅんや)弁護士 あゆみ法律事務所
大手銀行、製薬会社勤務を経て2004年弁護士登録。交通事故、労働事件、債務整理、企業法務などに幅広く対応。気軽に相談できる弁護士を目指し無料法律相談に力をいれている。

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