人気女優のスカーレット・ヨハンソンさんをモデルにした、本人そっくりの「ヒューマノイド・ロボット」が、「リアルすぎる」と話題になっている。
これは、香港のグラフィックデザイナーRicky Maさんが、1年半の歳月と、自費5万ドルをかけて作り上げた「Mark1」と名付けられたロボット。Rickyさんのホームページなどによると、骨格のパーツは3Dプリンターで製作し、電子機器を内蔵した。表面はシリコン製の皮膚で覆っている。
眼球に埋め込まれたカメラで顔を認識し、音声を制御する機能も搭載している。Rickyさんの「キレイだね」という言葉に、「ありがとう」と応える様子は、本物のカップルのようだ。
一方で、ヨハンソンさんが実在の人物であることから、肖像権の侵害ではないのかと指摘する声もある。日本で、実在する人物とそっくりの人物を作った場合、法的に問題になる可能性はあるのだろうか。肖像権の問題に詳しい佃克彦弁護士に聞いた。
●人の肖像を「みだりに利用」したといえるか?
「実在する人とそっくりのロボットを作ることは、肖像権の侵害が問題となります。判例上、人の肖像を『みだりに利用』することは肖像権の侵害になるとされているからです」
佃弁護士はこのように指摘する。どんな場合「みだりに利用」したことになるのか。
「ポイントは、そっくりロボットを公表しているかどうかという点です。
本件のように、特定の人にそっくりなロボットを作ってインターネットを通じて公表することは、その特定の人(本件ではスカーレット・ヨハンソンさん)の肖像権を侵害することになるでしょう。
他方で、たとえば、ロボットの製作者が、そっくりのロボットを作っただけで公表はしなかった場合、これは『みだりに利用』したとまではいえず、肖像権侵害にはあたらないと考えられるでしょう。
公表はせずに趣味で自宅で作っている分には法的には問題にならないのです」
●「一般人」と「芸能人」の違いは?
芸能活動などをしていない一般人とそっくりのロボットを作った場合とでは、結論は異なるのだろうか。
「著名人の場合、その肖像が一般の人びとの関心を引きつけるという力(顧客吸引力)を有することがあります。そのため、その肖像の侵害行為に対しては、特に『パブリシティ権』という特別な権利によって保護を受け得る可能性があります。
顧客吸引力のある著名人は普段、ギャラをもらってCMなどに出ているのであり、自己の肖像を利用させることは、通常、本人に対して経済的利益を生んでいます。
ですから、そのような著名人が肖像を無断で利用された場合、普段ならもらえるギャラをもらえないまま肖像を使われたという意味において財産的な損害が生じたといえます。よって、そのような財産的損害についてまで賠償を求めることができるのです。
他方、一般人の場合、顧客吸引力があるわけではないので、そもそもパブリシティ権は認められません。肖像を無断で利用された場合には、それによって生じた精神的損害の賠償を求めることができるにとどまります」
佃弁護士はこのように分析していた。