18歳、19歳も児童養護施設や里親のもとで過ごせるようにすべきーー。子どもの虐待などを議論する厚労省専門委員会は11月下旬、児童養護施設に残れる年齢を、現行の18歳未満から20歳未満までにすることで一致した。厚労省は来年の通常国会で関連法の改正案を提出する方針だという。
現在の児童福祉法では児童を「18歳未満」としており、18歳になると、原則として児童養護施設や里親から離れなければならない。しかし、一般的に児童の自立には時間がかかるうえ、施設を出ても20歳未満の未成年者は1人で住居や携帯電話などの契約ができないといった問題が指摘されていた。
この改正については「18歳以降も施設に残れるという選択肢があれば、自立の助けになる」など賛成する声も多い。これまでの制度のどこに問題があったのか。三村雅一弁護士に聞いた。
●18歳になってすぐに自立することは困難
「児童福祉法の『児童』については、労働基準法が18歳未満を『年少者』としていることを参考として、これをひとつの保護年齢と考え、『18歳未満』としていると言われています」
三村弁護士はこのように切り出した。いったい何が問題だと考えられているのだろうか。
「この制度の問題点は、自立に不可欠な住居や携帯電話の契約が単独で行えないという点にとどまるものではありません。それだけなら、民法の成人年齢が18歳に引き下がれば解決する問題です。
そもそも、『1人の人間として社会で生きていく』という意味での自立は、18歳では困難だという子が多いのではないでしょうか。虐待等の事情があって、施設等で生活を送ってきた少年・少女であれば、なおさらです」
●成人年齢を引き下げても解決しない
「また、18歳での自立を求められることで、施設等で生活する子どもたちの将来の選択肢が狭められてしまうという問題もあります。現に、施設等では、高等学校卒業後の大学等への進学率が低かったり、いったん大学等に進学しても、中途退学してしまうケースが多いといった課題が指摘されています。
さらに、18歳、19歳の未成年が虐待を受けた場合に児童相談所による保護の対象から外れてしまいます。これらの問題点については、仮に民法が改正され、成年の年齢が18歳に引き下げられたとしても、そのことをもって解決される問題ではありません。
虐待という辛い経験をした子どもたちが、必要とする支援を受けることで、自分たちの将来に様々な可能性を見出すことのできる制度となることを期待します」