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「ドローン空撮」で電波法違反? 機体を飛ばすときに注意すべき「法律問題」
総務省関東総合通信局のホームページより

「ドローン空撮」で電波法違反? 機体を飛ばすときに注意すべき「法律問題」

マラソン大会を空撮するため、小型の無人飛行機「ドローン」に、無免許では使えない周波数帯の電波を発する送信機を取り付けたとして、東京都の映像撮影会社と社長が5月中旬、電波法違反の疑いで書類送検された。

報道によると、社長は昨年11月、神奈川県で開かれた「湘南国際マラソン」を撮影するため、カメラ付きドローンを飛ばした。その際、総務大臣の免許を得ないで、5.8ギガヘルツ帯の電波を使用する映像伝送用の「無線装置」を取り付けた疑いが持たれている。

警察の取り調べに対して、社長は「ほかの会社もドローンで空撮していたので、混信するリスクを避けるため一時的に使った」と話しているという。ドローンをめぐって「電波法違反」の疑いで摘発されたのは、全国初ということだ。今回のポイントや利用者が注意すべき点について、南部朋子弁護士に聞いた。

●無線の利用には、原則として、総務大臣の免許がいる

「電波法では、電波を送受信する無線設備を用いる場合、原則として、総務大臣の免許(無線局の開設の免許)が必要とされています。

無線局の開設というのは、無線設備を設置し、それを操作する人が電波を発射できる状態にすることです。

例外的に、発射する電波が著しく微弱な無線局や、電波法令で定める技術基準に適合する無線設備だけを使用し、無線局の目的や運用が特定されている無線局を開設する場合は、免許が不要です」

南部弁護士はこのように電波法について説明する。今回のケースはどうなのだろうか。

「電波を使って映像を伝送する無線機を利用することも、無線局の開設にあたります。今回のケースでは、おそらく、

(1)ドローンに取り付けて使用していた無線機が、日本の技術基準に適合していなかった

(2)その無線機を使って開設した無線局が、発射する電波が著しく微弱な無線局にも該当しなかった

ものと考えられます。ですから、無線局開設の免許が必要なのに、その免許を取得しないまま無線局を開設した疑いで摘発されたのでしょう」

無免許で無線局を開設した場合、どのような罰則があるのだろうか。

「不法無線局の開設行為については、電波法上、『1年以下の懲役または100万円以下の罰金』という罰則があります。会社の代表者などがおこなった不法無線局の開設に対しては、会社にも罰金刑が科せられます」

●並行輸入品や海外サイトから直接購入したドローンには注意

ドローンは、一般の人の間にも普及しつつある。気軽に使ってみたところ、法律違反と言われないためには、どんな点に注意すべきなのだろうか。

「海外と日本では、電波利用の規制が異なります。

たとえば、並行輸入品や海外サイトから直接購入したドローンは、電波法上の技術基準に適合していない可能性があります。いわゆる『技適マーク』がない状態です。

そのため、日本では使えないことがあります。また、技適マークのある製品でも、カスタマイズによって違法な改造品となり、使用できなくなることもありますので、注意が必要です」

ドローンをめぐっては、事故も多発している。報道によると、今回のケースでは、ドローンが墜落して、マラソン大会の関係者がプロペラで顔を切るケガを負ったという。

「ドローンの利用は、人身事故に発展するおそれがあります。利用する際は、誤操作や誤作動等による墜落リスクの存在を忘れずに、自分や第三者を傷つけることのないよう、慎重に行動していただきたいと思います」

南部弁護士はこのように警鐘を鳴らしていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

南部 朋子
南部 朋子(なんぶ ともこ)弁護士 弁護士法人リバーシティ法律事務所
著作権法、商標法など知的財産法や国際取引をめぐる法律問題を担当している。ロボットをめぐる法律問題についても研究中。主な著書に『ポケット図解 著作権がよ~くわかる本(秀和システム)(共著)』。

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