テレビ朝日は2月4日、バラエティ番組の収録中に、アイドルグループ「3B Junior」の女性メンバー(12)が意識を失って倒れ、救急搬送されていたと明らかにした。
報道によると、女性メンバーが倒れたのは1月28日。BS朝日のバラエティ番組の収録中だった。女性メンバーは、ヘリウムガス入りのパーティーグッズを使ったゲームをしていて、ヘリウムガスを急激に吸ったことで意識を失ったとみられている。パーティーグッズには「大人用」という注意事項が記載されていたが、番組スタッフが見落としていた。
女性メンバーは、脳の血管に空気が入って血流が妨げられる「脳空気塞栓症」と診断され、いまだ入院中の状態。回復の兆しがあるものの、意識が十分に戻っていない状態だという。「3B Junior」は人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」の妹分とされる存在。
こうした収録中の事故で、テレビ局が罪に問われる可能性はあるだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。
●企業は処罰できない?
「テレビ局という法人自体が、今回のケースで罪に問われる可能性はないでしょう」
秋山弁護士はこのように述べる。それは、なぜだろう。
「刑法では、個人の刑事責任を中心に刑罰規定が設けられています。
法人が刑事責任を問われるのは、そのほとんどが『両罰規定』といって、個人を処罰するとともに、その業務主である法人もあわせて処罰する旨の規定が置かれている場合です」
今回は、その「両罰規定」が適用されるケースではないのだろうか。
「今回のケースでは、業務上過失致傷罪(刑法211条)が問題になりますが、この罪には『両罰規定』は設けられていません。
ですので、テレビ局という法人が、業務上過失致傷罪に問われることはありません。
もっとも、業務上過失致傷罪に『両罰規定』がないことについては、2005年のJR西日本・福知山線脱線事故等の際に社会的な批判も起きたところです」
●個人の責任は?
法人が処罰できないとすれば、番組制作にかかわった個人が、罪に問われる可能性はあるのだろうか。
「今回、業務上過失致傷罪に問われる可能性があるのは、番組制作の現場で、出演者の安全に配慮し、必要な安全管理体制を整備すべき立場にあるテレビ局の役職員でしょう。
『大人用』と注意事項が記載されているヘリウムガス入りのパーティグッズを、12歳のアイドルに使用させた点などについて、業務上必要な注意を怠ったかどうかが問題になります」
秋山弁護士はこのように述べていた。