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「ジャーナリストが現場に行くことを許さない雰囲気がある」人質事件をどう考えるか?
ジャーナリストの豊田直巳さん

「ジャーナリストが現場に行くことを許さない雰囲気がある」人質事件をどう考えるか?

中東の過激派組織「イスラム国」による日本人人質の殺害を受け、緊急集会「私たちは人質事件をどう考えるか」が2月4日、東京・永田町で開かれた。会場の参議院議員会館講堂には、福島みずほ・社民党副党首の呼びかけで約150人が集まり、ジャーナリストや弁護士の話に耳を傾けた。

●「後藤さんの遺志を継いでいく」

「後藤健二さん、助けることができなくて、本当にごめんなさい」

ジャーナリストの志葉玲さんはそう切り出した。

「安倍政権の動き方は、全力を尽くすフリをしていただけ。ご家族あてに届いたメールなど、直接コンタクトをとる方法があったのに、日本政府はしなかった。日本政府を批判すれば、ISIS(イスラム国)を利するという批判もおかしな話。批判するのは当たり前のことです」

こう述べたあと、次のように聴衆に訴えかけた。

「後藤さんは何を訴えたかったのか。紛争地で苦しむ人です。もう一度、私たちは目を向けなければならない。私たちは後藤さんを救えなかったのだから、その遺志を継いでいかなければいけない。『テロと戦う』などと勇ましいことを言って、感情論に流されるべきではない」

●現場で取材しない「大手メディア」の現状

一方、1996年にヨルダンのアンマンで一緒に取材するなど、後藤さんと親交のあったフォトジャーナリストの豊田直巳さんは、あるメディアから受けた取材について言及した。今回の事件で、後藤さんと湯川さんと並んで、イスラム国の人質ヨルダンのパイロットが人質になったと報じられたが、結局、殺害されたとされる。そのことへの感想を求められたのだという。

「(イスラム国の)だましうちをどう思うか、と聞かれました。私は湾岸戦争から取材していますが、戦争をする目的は1つだけ。勝つということ。ですから、嘘を含めてなんでもやります。

その流される嘘を『本当か』と疑うから、後藤さんも現場へ行ったんです。仮説を立てて『本当にそうなのか』と検証するのがジャーナリストの仕事ですが、いまはそれを許さない雰囲気があります。朝日新聞の記者2人がシリアに入っただけで、他の新聞が問題視しましたから」

新聞労連(日本新聞労働組合連合)の新崎盛吾中央執行委員長も、イラク戦争を取材したときの体験にもとづき、大手メディアの取材姿勢への懸念を口にした。

「私は戦争が始まると、イラク国外に撤退し、ヨルダンのアンマンで記事を書いていた。取材の情報源は、後藤さんのようなフリーで活動するジャーナリストやNGO団体の方々です。私ども現場の記者には『現場に入りたい』という思いがある。それでも、会社からストップされるのが、いまの大手メディアの現状です。現場に出ることを止めるような動きがあることを危惧しています」

(弁護士ドットコムニュース)

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