新春の風物詩「たこあげ大会」が、全国各地で開かれている。空高く舞上がるたこを見ていると、爽快な気分になる。ところが、たこのせいで新幹線が遅れるという、とんだハプニングがあった。
JR東海によると、1月12日午後2時ごろ、東海道新幹線の車両基地である名古屋車両所(名古屋市)で、長さ約15メートルの「たこ糸」が架線に引っかかっているのが見つかった。近くには、たこも落ちていた。
そのため、名古屋駅に移動する予定だった車両を動かせなくなり、午後2時29分名古屋発東京行きの「こだま」を別の車両に変更することになった。18分の遅れが発生し、約430人に影響が出たという。
どこから飛来したのかは不明だが、飛んでいった「たこ」が他人に損害を与えた場合、たこあげをしていた人は何らかの責任を問われるのだろうか。富永洋一弁護士に聞いた。
●「故意」や「過失」はあったのか?
「法律上、不法行為によって他人に損害を与えた場合、その損害を賠償する責任があります。具体的な状況にもよりますが、たこあげをしていた人は、発生した損害を賠償しなければならない可能性があります」
富永弁護士はこう切り出した。どんな状況ならば、賠償しなければならないのだろうか。
「不法行為が成立するためには、
(1)その行為が『違法』であること
(2)『故意』または『過失』
という条件が必要とされています」
一般的な感覚でいうと、たこあげは、(1)その行為が「違法」であることという条件にあたらない気がするが・・・。
「たしかに、たこあげ自体は、違法ではありません。
しかし、電線や建物など障害物がある場所や暴風の場合など、たこあげをするのに危険な場所や状況でおこなっていたとしたら、具体的な状況によっては『違法性』が認められる可能性があります。
また、(2)の条件についても、たこ糸を自ら切断したような場合には『故意』が認められるでしょうし、たこ糸が今にも切れそうだと認識しながら凧あげをしたような場合には『過失』が認められるでしょう」
●鉄道会社の危険防止策が不十分な場合は?
ただ、ほとんどの人は安全な場所や状況で、たこあげをしている。不意にたこ糸が切れてしまった場合はどうなるのだろうか。
「たこ糸のもともとの強度が足りなかったのであれば、たこやたこ糸の製造業者が製造物責任を負うことも考えられます」
では、今回のケースをどう見ればいいのか。
「たこ糸に限らず、強風や鳥などの仕業で、ひも状の物体などが架線に引っかかるようなことは、まったく予見できないことではないでしょう。
したがって、鉄道会社の危険防止策がそもそも不十分な場合には、鉄道会社にも落ち度があるとして、損害賠償のすべて、または一部が認められない可能性もあります」
富永弁護士はこう締めくくった。たこあげで遊ぶときは、まわりの状況に気をつけよう。