神奈川県厚木市の市立小学校に通っていた女子児童が、下校中に男子児童からひざを蹴られて後遺障害を負ったとして、男子児童の両親と市に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が3月19日、東京高裁であった。
谷口園恵裁判長は、男子児童の両親に約50万円の支払いを命じた一審判決を支持し、原告・被告双方の控訴を棄却した。
男子児童の両親は、身体的な特性から男子児童がひざの高さまで足を上げて蹴ることはできないと主張していた。しかし、東京高裁は一審と同様に「少なくとも1回蹴る暴行をした事実を認めることができる」と判断した。
●女子児童は「ひざを負傷し転校を余儀なくされた」と主張
判決文などによると、厚木市の市立小学校に通っていた女子児童(当時5年生)は2016年、同じ登校班の小学4年生の男子児童から右ひざを蹴られるなどの暴行を受けた。
さらに同年5月から12月にかけて、男子児童から追いかけられるなどの迷惑行為を繰り返し受けたという。
女子児童側は、これらの行為によって右ひざを負傷したほか、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、精神的苦痛から転校を余儀なくされたと主張。男子児童の両親と学校の設置者である厚木市に対して、計約2600万円の損害賠償を求めて提訴した。
●男子児童側、身体の特性上「ひざを蹴ることは不可能」
これに対して、男子児童の両親は、男子児童には発達性協調運動障害があり、さらに両膝にオスグッド・シュラッター病があると反論。「もともと足を高く上げることができず、女子児童のひざを蹴ることは不可能」だとして、一貫して加害行為を否定していた。
また、目撃したとされる児童の供述にも信用性がないとうったえていた。
●一審は「違法性を認めるに至らない程度の迷惑行為があった」と認定
一審の横浜地裁小田原支部は2025年10月、2016年4月11日に男子児童が女子児童の右ひざを少なくとも1回蹴り、右ひざ打撲のけがを負わせたと認定。
そのうえで「不法行為を構成するほどの違法性を認めるには至らない程度の迷惑行為があった」と判断した。
厚木市の安全配慮義務違反は認めなかった一方、男子児童の両親の監督義務違反を認め、計約50万円の支払いを命じた。
この判決を不服として、原告・被告双方が控訴していた。
●東京高裁「蹴ることが不可能とはいえない」
東京高裁の谷口裁判長はこの日の判決で、トラブルの翌日に小学校で実施された聞き取り調査に言及。男子児童や女子児童、その場にいた他の児童が「男子児童が女子児童を蹴った」と話したと指摘した。
さらに、男子児童の両親が提出した証拠を検討しても、「男子児童が女子児童のひざを蹴ることが物理的に不可能であったとまでは認められない」と判断。一審の事実認定を維持した。
●男子児童の母「このまま暴行を認めるのは納得いかない」
控訴審判決後、男子児童の母親は東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開き、「息子が蹴れないということをずっと伝えてきたが、教育委員会や警察、裁判所の判断にまったく反映されないまま、暴行を認められるのは納得できない」とうったえた。
被告側代理人の伊藤克之弁護士は「男子児童が1回でも暴力を振るったと認定されたのは、非常に不当な判決といわざるを得ない。“冤罪”を晴らすべく、可能な手段をとっていく」と述べた。