もうすぐクリスマスですが、クリスマスパーティーの子どもの乾杯ドリンクとして人気の飲み物に、ノンアルコール炭酸飲料「シャンメリー」があります。
シャンメリーは様々なメーカーが製造販売していますが、飲料大手からは販売されていません。そこには意外なルールの存在があるようです。
●「シャンメリー」とは?
「シャンメリー」は、主にクリスマスに飲まれる、子ども向けのノンアルコール炭酸飲料です。シャンパンボトルのような瓶に入っており、栓を抜く時に「ポン!」という勢いの良い音が鳴ります。
子どもがメインターゲットであるため、ポケモンやプリキュアといった人気キャラクターのパッケージが多いようです。
実は商標登録されています(第1208094号)。権利者は「全国シヤンメリー協同組合」(東京都中央区)です。「ヤ」の字が大文字であることからも、歴史があることが伝わってきます。
全国清涼飲料協同組合連合会のサイトに掲載されている「シャンメリーの歴史」では、1947年、戦後間もない東京で進駐軍が飲んでいたシャンパンを安価で大衆が飲めるものにしたいという東京の飲料業者が「ソフトシャンパン」として売り出したものが元となっているようです。
その後フランス大使館から「シャンパン」の名称の使用禁止を求める動きが起こりました。シャンパンという名称は、フランスのシャンパーニュ地方で、一定の要件に従って作られたスパークリングワインのみが名乗れるためです。
この動きに対応し、1973年にシャンメリーと改称して今に至っているそうです。
●中小企業分野調整法とは?
「中小企業分野調整法」は、正式名称を「中小企業の事業活動の機会の確保のための大企業者の事業活動の調整に関する法律」といいます。
この法律は、大企業が中小企業の多い事業分野に進出しようとする際、中小企業の経営に著しい悪影響を及ぼすおそれがある場合に、国が調整を行うためのものです。
「商標登録しているのなら、法律で守られているのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、商標権はあくまで「シャンメリー」という名称やロゴを保護するものです。
たとえば、味や香りが似ている商品や、クリスマスに子どもが飲む「類似の炭酸飲料」を、大企業が「別の商品名」などで販売することまでは防げません。
また、そういった類似製品が販売された場合、不正競争防止法によって保護されないかも問題となります。しかし、明らかに別の商品名であり、販売業者間の営業上の関係性が混同されないような場合には、同法違反にもあたらないと考えられます。
そうすると、シャンメリーに似た商品を大企業が販売した場合、生産コストを下げるなどして価格競争力の高い商品を売り出せば、中小企業は負けてしまいます。
そのような事態に対し、中小企業を保護するための調整を行っているのが中小企業分野調整法というわけです。
●保護される「中小企業」とは?
「中小企業」は経営規模の小さな会社、というイメージだと思いますが、本法ではおおざっぱに以下のように定義しています。(正確な定義は同法2条を参照)
1)製造業・建設業・運輸業など 資本金3億円以下、または従業員300人以下
2)卸売業 資本金1億円以下、または従業員100人以下
3)サービス業 資本金5000万円以下、または従業員100人以下
4)小売業 資本金5000万円以下、または従業員50人以下
●具体的にどのような規制がされているのか?
ただし、法律の条文の中に「シャンメリー」や「ラムネ」といった具体的な品名が明記されているわけではありません。
これらは、全国清涼飲料協同組合連合会と全国清涼飲料工業組合連合会という業界団体が1977年以降「中小企業分野宣言」を行うことで、事実上の対象品目として扱われています。「宣言」を行っている対象品目は以下のとおりです。
1)ラムネ 2)シャンパン風密栓炭酸飲料(シャンメリー) 3)びん詰コーヒー飲料 4)びん詰クリームソーダ 5)ポリエチレン詰清涼飲料 6)焼酎割り用飲料
●国による「勧告」や「命令」の仕組み
もし大企業がこれらの分野に強引に参入しようとした場合、法律上どのような措置がとられるのでしょうか。
同法第6条では、大企業の事業開始や拡大によって中小企業の経営の安定に著しい悪影響が及ぶおそれがある場合、中小企業団体は主務大臣に対して「調整の申出」を行うことができると定めています。
この申出を受けた国(主務大臣)は調査を行い、必要があると認めれば、同法第7条に基づき、大企業に対して参入時期の繰り延べや規模の縮小などを「勧告」します。これは行政指導にあたります。
もし正当な理由なくこの勧告に従わない場合、国はその事実を公表することができます。
公表されてもなお従わず、中小企業の利益が著しく害されるおそれがある場合(条文上は「中小企業者の相当部分の事業の継続が著しく困難となるおそれがあると認められるとき」)には、同法第11条に基づき、勧告にかかる措置をとるよう「命令」を出すことができます。
この命令に違反した場合には、同法第16条により300万円以下の罰金が科されるという罰則も設けられています。
●実際には「伝家の宝刀」として機能
非常に強力な権限を持っているように見えるこの法律ですが、実際の運用としては、抜かずに見せるだけの「伝家の宝刀」として機能しています。
これまでに、実際に「命令」や「罰則」が適用された事例は確認されていません。多くの場合、「調整の申出」や「勧告」、あるいはそれ以前の段階で大企業側が調整に応じたり、参入を断念したりすることで解決しているからです。
過去にはコカ・コーラ社が焼酎割り用飲料の販売を中止した事例などもあり、法律による強制力が発動される前の話し合いや調整によって、中小企業の事業領域が守られているのが実情です。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)