中居正広氏とフジテレビアナウンサーのトラブルに端を発したフジテレビ問題。第三者委員会の報告も終わり、次の焦点は6月に控える株主総会の行方だ。
フジHDは3月に現社長・金光修氏を新会長に、現専務でフジテレビ社長も務める清水賢司氏を新社長に指名する人事案を発表。
一方、「物言う株主」として知られる米投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」はフジHDの人事案は不十分として、独自の人選を送付するなど、全面対決の様相を呈している。
芸能問題に詳しい河西邦剛弁護士は株主総会について、「フジHD側が有利」とした上で、フジHDと外部取締役とのパイプ役として「鍵を握るのは清水社長」との見解を示した。
⚫︎フジHDとダルトン「完全対立ではない」
河西:現状の役員の総とっかえをダルトンが求めているため、一見すると、現フジ経営陣とダルトン側との完全対立に見えるかもしれません。しかし、実際は全面対決という形にはならないのではと思っています。お互いに『まずはこの案から』という“第1案”を出し合っているような段階だと思います。
議決権ベースでいうと、現時点ではフジ側が有利です。大株主や系列局などの既存株主が支持を続ければ、30%くらいの支持が見込めるのではないでしょうか。一方のダルトン側は、旧村上ファンド系も含めて約17%。SBIホールディングスの北尾吉孝会長が「5%くらい買うのはわけない」と述べていますが、総会の基準日は3月27日なので、その後の取得分には議決権がありません。
ですが、フジ側もこの2カ月間でスポンサーが戻ってこないという現状があります。今は支持してくれている関係会社でも、今後は支持できないという可能性もあると思います。だとすれば、支持のあるうちにダルトン側と話をする価値はあります。
ダルトン側は確かに一貫して、経営陣の総入れ替えを求めています。しかし、結局のところ一番なのは儲けたいということ。自分たちが経営権を握りたいというより、株式価値を上げたいという考えが大きいです。そうすると対話をするメリットが出てきます。
⚫︎キーマンは清水社長「両者のパイプ役に」
河西:確実にキーマンになるのは清水社長です。ダルトン側とフジ側のパイプ役を担っていて、SBIの北尾会長も「清水氏は残してもいいのでは」という表現を使っています。実はこれ「残ってもらいたい」という気持ちもあるのではと思います。
ダルトン側の案では社内取締役が誰もいない中で、仮に清水社長がいなくなると、両者のパイプ役がいなくなってしまいます。北尾会長が仮に取締役に入るとしても、マネジメントをしやすくするために「清水社長の残留」は考えられるのではと思います。
さらに清水社長の経歴にも注目されている部分があります。アニメ出身ということです。ドラマやバラエティー出身になると再放送やネット媒体での二次使用などに置いて、難しい権利処理がある。その中で芸能事務所とのパワーバランス。人と人との関係が生まれます。すると今回問題となった人権侵害と結びつきができてしまいます。
アニメももちろん声優事務所との関係はありますが、芸能事務所ほど大きく影響することはありません。そうすると今回の問題の根本にあるパワーバランスに巻き込まれていない立場にいるのが清水社長。そういったところからも「残留」の適性があるのかなと思います。