「ご近所さんが廊下で炊飯している……」
マンションと思われる廊下で、炊飯器が置かれている写真がXに投稿されて注目を集めました。廊下のコンセントから電源をとっていたようです(現在、この投稿は削除されています)。あり得ない光景に投稿者も驚いたみたいです。
この投稿に対して「果たしてご近所さんなのでしょうか。宅外の人が盗電している可能性も」「奥さんのつわりがしんどいとか」など、さまざまな「推理」が寄せられていますが、真相はまだわかっていません。
マンションの共用部分にあるコンセントを勝手に使うケースはしばしばあります。こうした行為に法的な問題はないのでしょうか。本間久雄弁護士に聞きました。
●コンセントを勝手に使えば窃盗罪
——マンションなどの集合住宅の廊下に設置されているコンセントを勝手に使った場合、なんらかの罪に問われる可能性はありますか?
まず、コンセントを使うことが罪に問えるかどうかですが、刑法235条は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」とし、窃盗罪について規定しています。
かつて刑法235条が規定するところの財物に電気が含まれるかどうかが問題となりましたが、この点について、法改正で「この章(窃盗及び強盗の罪)の罪については、電気は、財物とみなす」(刑法245条)とされ、電気を無断で使うことも窃盗罪の対象とされました。
マンションの住民がマンションの廊下に設置されているコンセントを使う点について、自分のマンションだから「他人」ではないかと思われるかもしれません。
マンションには、専有部分と共用部分があり、おおざっぱに言って、マンション住民の居室である専有部分以外は共用部分となります。ですから、マンションの廊下に設置されているコンセントは、共用部分となります。
共用部分は、区分所有者全員の共有に属し(区分所有法11条1項)、マンションの廊下にあるコンセントから出る電力は、マンションの管理組合が契約することになります。
つまり、共用部分のコンセントから出る電気は、マンションの管理組合という他人の財物に該当します。
ですので、集合住宅の廊下に設置されているコンセントを無断で使用した場合、マンションの住人であったとしても、窃盗罪(刑法235条・刑法245条)が成立します。
●どうしても廊下で電気を使いたかったら…
——1回の炊飯に使った電気代は微々たるものだと思われますが、弁償する必要はありますか。
電気代は1円や2円といった微々たるものであったとしても、実際にマンション管理組合に損害が発生している以上、電気の無断使用者には不法行為責任が発生しています(民法709条)。したがって、使用者は、マンション管理組合から請求がされれば弁償する必要があります。
——なんらかの理由があり、どうしても共用部分のコンセントを使いたい場合、マンション管理組合などに許可をとれば良いのでしょうか。
コンセントの無断使用に窃盗罪や不法行為が発生するのは、管理者の意思に反しているからです。したがって、マンションで決められた手続きに則って、マンション管理組合から許可を取れば、法的には問題ありません。