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PayPay誤送金、受け取っても「ラッキー」じゃない! 犯罪被害リスク上昇に「利息」まで…弁護士が教える正しい返金方法
スマートフォン(maruco / PIXTA)

PayPay誤送金、受け取っても「ラッキー」じゃない! 犯罪被害リスク上昇に「利息」まで…弁護士が教える正しい返金方法

スマホのキャッシュレス決済サービス「PayPay」で送金しようとしたところ、見ず知らずの他人に間違って送ってしまったという人は少なくないようだ。誤送金した側からすれば、なんとかして取り戻したいと考えるだろう。

一方で、誤送金された側にも戸惑う人がいる。ほとんどの人は「ラッキー」とはとらえず、「気味が悪い」と思うのではないか。

弁護士ドットコムニュースが誤送金について取り上げた記事のコメント欄にも、「誤送金された」という投稿者の体験が寄せられた。

見知らぬ相手から「送り返してー」「警察行きます」などとメッセージがきて、すぐに送り返したそうだが、「なんかこっちが悪い事してる気分になりました」と複雑な心情になったそうだ。

このようにキャッシュレス決済サービスで、心当たりのない送金を受けた場合、どのような対応をすればよいのだろうか。

池田誠弁護士は、誤送金された側が犯罪に巻き込まれるリスクも指摘し、具体的な返金の心得について解説する。

●誤送金された人は「利息」をつけて返さないといけない

——誤送金されたお金は返さなければいけないのでしょうか。

誤送金された人は、法律上の原因なく利益を得たことになります。この利益のことを「不当利得」といいます。

誤送金した人は、誤送金された人に対して「不当利得」を返すよう求める権利があります(不当利得返還請求権)。言葉は難しいですが、ここまでは当たり前のことのように思えるはずです。

実は、さらに誤送金した人は、送金した金額をそのまま返すよう請求できるだけでなく、「悪意の受益者」に対しては「利息」をつけて払うよう請求できる権利も備えています。

一般的には、誤送金された人は、自分に送金を受ける理由がないことを知っているのがほとんどでしょう。少なくとも送金した人から「誤送金をしてしまいました」と告げられることで、理由なく送金を受けたことを知るはずです。

ですので、遅くとも送金者から誤送金を告げられた時点で「悪意の受益者」となります。それ以降は、法律上、受け取った金額に「利息」を乗せて返さなければいけなくなります。

利息の利率は、民法が定める年3%(※記事掲載時)です。また、民事上の責任に加えて、刑事上の責任にも注意しなければなりません。

——誤送金された人は罪に問われうるのでしょうか。

誤送金された人が、誤送金を告げられるなどしてその事実に気付きながら、残高を全部決済に使ってしまったようなケースを考えてみます。

本来は使用できない(返金するべき)残高を使って決済をしたことになるので、チャージ方法次第では、決済した店舗との関係で詐欺罪を構成する余地が生じます。

まず、安易に送金を受け取らないこと、仮に受け取ってしまっても、できるだけ速やかに返金することを心掛けてほしいです。

●「誤送金」してきた相手に個人情報を教えない

画像タイトル スマホのキャッシュレス決済アプリのイメージ(Haru photography / PIXTA)

——得体の知れないお金に不安になる人もいるはずです。誤送金された人が返金の際に注意すべきことを教えてください。

最近は次々と新しい犯罪手口が生み出されていることもあり、返金時には、犯罪に巻き込まれないよう、次の点に注意していただきたいです。

・不用意に個人情報を明かさない ・あとになって返金を争われないようにする

送金した人は、携帯電話の番号を通じて送金することが多いので、送金先の電話番号を把握していると思われます。

これに加えて、返金のやりとりで、送金された人の氏名や住所などを聞き出して、それらの情報を犯罪に利用する可能性があります。したがって、不用意に個人情報を開示するべきではありません。

電話番号と氏名や住所の個人情報を紐づけられてしまうと、そこから思わぬ犯罪に情報が使われるおそれがあります。

●アプリ以外の手段で返金方法を提案されたら注意!

——そのほかに気をつけることはありますか。

送金のあったアプリ以外の方法や誤送金者以外に対する返金を指示された場合、二重の支払いを強いられるリスクがあるので注意が必要です。

たとえば、こんなケースが考えられます。

・送金した人から「私に返金するのではなくて、本来送金するはずだった第三者に送金してほしい」と頼まれる ・「誤送金が怖くてアプリを削除した」などと言われて、銀行振込の方法を指示される

このような指示に安易に従うと、あとになって「自分はそんなことを頼んでいない」とか「着金が確認できない」などと言って、改めて返金を求められる可能性があります。

返金する場合、送金に利用されたアプリを通じて、送金者のIDに返金する方法が最も安全です。

●銀行振り込みでは「押し貸し」という手口が問題になったことも

——ほかに注意するべき点と対策は。

最近ではあまり耳にしなくなりましたが、借りてもいないのに勝手に送金したうえで、法外な金利を要求する「押し貸し」という手口が銀行振り込みで問題になった時期がありました。

キャッシュレス決済でも同様の手口が考えられます。そうでなくても、あとになって利息や損害金の請求が残っていると主張されるおそれもあります。

ですので、返金をする際には「◯◯円を返金していただければ、他に何も請求しません」という確約を送金者に求める方法が考えられます。

その確約をメッセージで受信してから、その指定金額を返金するようにするのが安心かと思います。

一方で、誤送金した人も、不当利得の返還を求める権利があるとはいえども、自分のミスで相手に不安を与えていることは十分に理解しておきましょう。

自分から上記のようなメッセージを送るなどして、相手の不安に最大限配慮して返金を求めるのが適切だと思います。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

池田 誠
池田 誠(いけだ まこと)弁護士 にっぽり総合法律事務所
証券会社、商品先物業者、銀行などが扱う先進的な投資商品による被害救済を含む消費者被害救済や企業や個人間の債権回収分野に注力している下町の弁護士です。債権回収特設ページURL(https://nippori-law-saikenkanri.com/)

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