音楽教室における楽器演奏の使用料をめぐり、「日本音楽著作権協会」(JASRAC)は2月28日、音楽教室事業者などでつくられる「音楽教育を守る会」と合意し、共同で記者会見を開いた。
新規定における使用料は、年間の包括的利用許諾契約を結ぶ場合、生徒1人あたり年間750円。中学生以下は1人100円とされた。新規定に基づく運用は今年4月から始まる。
生徒による楽器演奏は使用料支払いの対象でないことが明記されたほか、個人経営の教室は徴収の対象外とされた。
これまで音楽教室の使用料率は、JASRACの楽曲を使った講座の受講料金総額の2.5%だった。新規定において想定される徴収額は大幅に引き下げられる見込みだという。
●「20歳以下の演奏人口が減少」「子どもが音楽に接する機会確保」ようやく合意
レッスンの使用料徴収については、JASRACが収入の2.5%とする方針を2017年に発表。JASRACによれば想定する徴収額は最大10億円ともされた。反発した教室側は、レッスンにおける著作物の演奏に「演奏権」は及ばないなどとして、JASRACを相手取り、東京地裁に提訴していた。
最高裁第一小法廷の判決(2022年10月24日)は、教師の演奏については音楽教室が著作権使用料を支払う義務を認め、生徒の演奏については義務がないと判断した。
終結した裁判の結果をうけ、双方が協議を進め、約2年の歳月を経て合意に至った。
「守る会」の大池真人会長は「8年間という長い時間がかかった案件は無事に本日合意した。大変安堵している」と話した。
「凄まじい勢いで20歳以下の演奏人口が減っている。手を打たないと日本の音楽文化がプアなものになる。我々の努力が足りないこともあるが、危機感をJASRACも感じたと思う」(大池会長)
JASRACの伊澤一雅理事長は「子どもたちが多様な音楽に接する機会を私たちが確保しなければいけない。そのようなことが持続的な音楽文化の発展に必要という共通認識に至った」とする。
「守る会」の登録法人事業者の生徒数はおおよそ70万人。大池会長によれば、仮に生徒の半数を中学生以下として、すべての事業者が年間包括契約をした場合、ざっくりとした徴収額は「約3億円弱」とも想定されるという。