男性の刑務官から裸を見られるなどして精神的苦痛を受けたとして、岐阜県の笠松刑務所に服役中の50代の女性受刑者が8月26日、国に対して121万円の損害賠償を求める国家賠償請求訴訟を岐阜地裁に起こした。
●全裸を動画撮影、衣類貸与の不許可も
訴状によると、原告の女性受刑者は2023年7月1日、刑務所の職員と言い合いになったことをきっかけに保護室に連れて行かれ、その際に男性の刑務官が胸部を触れたという。
その後、原告が保護室でブラジャーで首を絞めるなどの自傷行為を繰り返すようになったため、刑務所が着替えを指示。その際に服を脱がされて全裸になった原告を、近くにいた男性の刑務官が見ていたという。
さらに、身体検査の時に女性の刑務官が裸になっている原告の様子を動画で撮影したり、刑務所側が原告に衣類の貸与を許可しなかったりしたとしている。
原告側は、こうした笠松刑務所の対応が性的自由権やプライバシー権が含まれる憲法13条や、受刑者らの羞恥心などに配慮するよう求めている刑事収容施設法などに違反すると主張している。
岐阜地裁(天空のジュピター / PIXTA)
●背景に「夫からの暴力や暴言」
原告代理人の大野鉄平弁護士によると、2023年7月に、大野弁護士が事務局長を務めるNPO「監獄人権センター」に原告の母親から相談があった。
原告の女性受刑者は、刑務所に入る前に夫からの暴力や暴言でうつ病やパニック障害などの精神疾患にかかり、男性から身体的、性的な暴力を受けると精神的に混乱しやすい傾向があったという。
大野弁護士は「男性の刑務官が女性受刑者の裸を見ることは女性に対する暴力の一種で、例外なく禁止されるべきだ」と話している。
笠松刑務所は弁護士ドットコムニュースの取材に、「訴状が届いていないので現段階ではコメントできません」と回答した。