弁護士ドットコムでは、これからの法曹養成について問うアンケートを実施し、500人から回答を得ました(実施日:3月9日)。ロースクールが開校して20年。回答者も8割以上が法曹歴20年未満と、ほぼロー世代が占めました。
開校当初は74校と乱立した後に半減し、合格率が確保できないなど紆余曲折あったロー スクールには、この間、批判が集まりました。制度について「失敗」「おおむね失敗」と 考える人が53.0%と半数を超えました。
幾度となく制度変更されてきたローの志望者が減りつつあります。一方で、短期的に合格を目指す予備試験に人気が集中しています。この現状をどうとらえているか意見を募ると、自身を含めた法曹界の未来を憂う声が相次ぎました。
●旧試組はおおむね否定的
世代別に見ていくと、旧司法試験で受かった弁護士は、ロースクール制度を失敗・おおむね失敗だと考える人が約8割いました。一方、ロースクール修了後または在学中に受かった層では「成功・おおむね成功」とみる人が2割ほどと一定の評価をしています。世代間格差が顕著に表れた結果です。実際にロースクールに通っていたかどうかで評価が分かれるのは、当然とも言えます。
批判される理由はさまざま指摘されていますが、失敗の理由として一つだけ選んでもらったところ、最も多かったのは「弁護士増加による弊害があるから」で29.4%でした。
また、法曹になる志望者が減っていることへの理由についても3つまでの複数回答で尋ねたところ、「収入が増えない」が58.2%と突出していました。弁護士数の増加による競争激化を警戒する姿が浮かんできます。
しかし、一方で実際に食えなくなったかどうかを問うと、「そう思わない」「あまりそう思わない」という意見が半数を超えています。
20年前に比べれば、法曹の数は現在4万5000人を超え、2倍以上になっています。いずれ食えなくなるかもしれないという懸念が多く報じられることによって、若者にとって法曹が魅力ある仕事ではないというイメージダウンにつながってきたのかもしれません。
●若手から恨み節、実務家教員からは懺悔…
自由回答では、自由競争に消極的な考えに若手世代から手厳しい声が相次ぎました。
●改革・人数・収入等で全国的に揉めている業界に踏み込みたくない(3年未満) ●「弁護士は食えなくなった」などという立証されていないマイナスイメージが世の中に蔓延している(10年以上20年未満) ●法曹養成に関しては理想や理念ばかりが強調されて現実が放置されているきらいがある。10代・20代が進路選択をする際に重視していることや悩んでいることに正面から向き合って、現実的で効果的な対策を打つよう真剣に取り組まなければ、混乱は止まらないと思う(3年未満) ●法曹養成の未来は、キャリアの終盤に差し掛かってきて余裕のある法曹にもっと考えてもらいたい(3年以上5年未満) ●現場を知らない者による、多くの若者の人生を使った社会実験は即刻やめなければ未来はない(3年以上5年未満)
一方で、ロースクールの教壇に立っていた経験があるという法曹歴30年以上の方からも「懺悔」のような声がありました。
法科大学院の現場で必死に授業や運営について努力してきたつもりだが、結果として制度が上手く機能しなかったことについては本当に残念で、力が至らなかったことや十分な見通しを持っていなかったことについて心から申し訳なく思う 本来は、法科大学院を経て法曹になった人たちと一緒に協力して不断の改善をする議論をしていかなければならなかったと思う しかし、その時期の新人弁護士の就職難でそのような状況にはとてもできなかったので、現時点では未来について見通した意見も述べることはできなかった。未来を考えるとすれば、若手からベテランまで広い声を聞いて進めるということくらいしか、今は思いつかない
法曹のプレゼンスが下がっていることに対しては、世代を超えて危機感を抱えているようです。ただ、打開する術については実効的な案を挙げた人はあまりいませんでした。提言として、以下のような意見をご紹介します。法曹の数を調整するだけではなく、法曹3者がまとまって、司法を身近にする努力を続ける必要性がありそうです。
●斜陽産業ではあるので、弁護士会が一丸となって需要の掘り起こしのための政治活動をすべき(10年以上20年未満) ●ネガティブキャンペーンが浸透して、つまらない仕事のように思われているのが残念。 ローメイキング含め、創造性のある仕事が沢山あるので、若い人に面白い仕事を熱を持って語ることが必要だと思う(30年以上) ●稼げるか稼げないかというより、激務であることが問題なのだと思う。しかもネットで叩かれたり、社会的な地位も低くなったりするというのであれば、誰が好き好んで選ぶのか。「当たり前の激務」を当たり前にしない工夫は絶対に必要(3年以上5年未満)