大阪市立桜宮高校の男子生徒が2012年12月にバスケットボール部顧問の教諭から体罰を受け、その翌日に自殺した問題で、警察は13年1月10日から学校関係者の事情聴取を始めている。警察が動いたということは、「犯罪」の可能性があるということを示している。
しかし現状では、体罰は学校だけでなく、さまざまな組織やチームで、愛のムチや指導として行われているケースもあるし、賛成する人もいる。はたして体罰は、犯罪なのか?
どこまでが許されて、どこからが犯罪なのか? 親でも犯罪者になるのか? 先輩・上司が殴った場合は? 小池拓也弁護士に聞いた。
●ほとんどの体罰は「犯罪」にあたる可能性がある
「体罰は、刑法でいう傷害罪(204条)、暴行罪(208条)などの罪にあたる可能性があります。これが犯罪になるかどうかは、法律上正当化できるかどうかで決まります。
教員の場合、学校教育法11条が懲戒権を認めていますが、その一方で体罰を明確に禁止していますので、体罰の正当化はできません。
親の場合、民法822条が懲戒権を認めている上、体罰を禁止した法律はありません。したがって、こどもの監督・保護・教育に必要な限度でではありますが、体罰は正当化される余地があります。
しかし、身体に外傷が生じたり、外傷が生じるおそれのあるような体罰は、限度を超えるものとして正当化されません(児童虐待にもなります)。
一方、学外のスポーツクラブのコーチや学校の先輩、会社の上司などの場合、懲戒権を認める法律はありません。法律で懲戒権が認められている教員ですら、体罰は正当化されないのですから、これとのバランスでいえば、コーチや先輩、上司の体罰は正当化されないでしょう。
もっとも、体罰を受けることに『事前の同意』があれば正当化の可能性は出てきます。しかしこうした上下関係の中では、同意が有効とは簡単には認められないでしょう」
このように小池弁護士は説明する。つまり、原則として体罰は「暴行罪」や「傷害罪」の犯罪にあたる場合が多く、例外的に、子供の懲戒権をもつ親が、教育のために軽い体罰を加える場合に限って正当化される、といえそうだ。
なお、補足として、小池弁護士は「体罰が『犯罪』となる場合であっても、検察官が『起訴するまでもない』と判断すれば、処罰はされません」と話している。
そのような場合、検察官の判断に不服がある人は、他の犯罪と同じように検察審査会に審査を求めることもできるが、教師や上司が体罰を行ったとしても、必ずしも処罰されるわけではないということだ。