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同じビルに「カレー屋」開業→美容室に漂う異臭…クレームも改善されず「貸主、なんとかして!」
美容室(yosan / PIXTA)

同じビルに「カレー屋」開業→美容室に漂う異臭…クレームも改善されず「貸主、なんとかして!」

美容室の開業直後に、同じビルの2階にカレー屋が入ったことから「におい」のトラブルに見舞われたとして、弁護士ドットコムに相談が寄せられた。

この美容室オーナーは「ダクトからの臭いがきつく(美容室の)店内にもカレーの臭いが立ち込め」ていると説明する。カレー屋にも何度か指摘したり、ビルの管理会社にも報告したが、一向に改善されないという。

「とにかく臭いをなくしたい」と切実に悩む美容室オーナーは、どうしたらよいのか。こうしたテナントの訴えに、貸主側は応じる必要があるのだろうか。後藤貞和弁護士に聞いた。

●美容室はビル側に「におい防止措置」をもとめられる

——美容室はビル側にどのような対応をもとめられますか

貸主には、賃貸借契約の目的に従い、借主である美容室に対し、契約の目的物である当該テナントを使用収益させる義務があります(民法601条)。

何が契約の目的なのかは契約の内容や当事者間の意思の合理的解釈によりますが、美容室の営業を前提にテナントを借りたのであれば、当然、美容室の営業に支障のない使用収益をできることが契約の中身となっているといえるでしょう。

以上を前提に、美容室側としては、ビル側に、賃貸人(貸主)の義務の履行として、カレーの臭いの発生や美容室への流入の防止措置を求められます。

ビル側がこれに応じない場合、カレーの臭いで生じた損害(客足が遠のいたことで減少した売上等)について、ビル側の債務不履行による賠償請求することも考えられます。

——これまでの裁判では、どのように判断されていますか

過去には、貸主側に臭いの抜本的な解決策をとらなかったとして、賠償を命じた裁判例もありますが、貸主側にあらゆる臭いの防止義務があるわけではないと言っています。

この裁判では、「受忍限度」という用語を使って、「悪臭発生の有無、悪臭の程度、時間、当該地域、発生する営業の種類、態様などと、悪臭による被害の態様、程度、損害の規模、被害者の営業等を総合して、賃借人として受認すべき限度内の悪臭か否かの判断をすべきである」と示しています。

●「カレー臭被害」客の声を集めることもポイントか

——「臭い」に困ったテナントは、裁判に向けてどういう準備をすればよいでしょうか?

これまでの裁判例を踏まえると、今回の美容室のケースでは、悪臭があるということは当然の前提として、美容室の営業にとってカレーの臭いがどういった影響を与えるのかを具体的に示していく必要があります。

先の裁判でも、顧客から臭いの影響を書いてもらった陳述書を多数準備し、多くの顧客が不快感を示していたことを被害の根拠のひとつとしています。

臭いという主観的側面も多分に含まれるものの影響で、どこまで貸主側の責任を認めるべきかは、裁判官も頭を悩ませるところかと思います。上記裁判例のように顧客等から臭いの影響を聴き取っておくことは、臭いの有無や営業への影響をできるだけ客観化することになるので、非常に有益でしょう。

ほかにも、ビル側に対策を求めることは当然として、要望を内容証明郵便で送るなど、将来の紛争化に備えて、対策を求めていたことを証拠化しておくことも肝要です。

プロフィール

後藤 貞和
後藤 貞和(ごとう さだかず)弁護士 弁護士法人後藤東京多摩法律事務所
2014年弁護士登録、仙台弁護士会所属。当事者の納得いく解決を目指した親切・丁寧な対応をモットーとしています。Chatwork等のビジネスチャット、ビデオ通話による相談にも対応しています。お気軽にご相談ください。

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