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「統一教会と名乗らず戸別訪問するよう指示された」元信者、苦しい体験語る
米国からオンライン参加で体験談を語った「祝福2世」の元信者たち

「統一教会と名乗らず戸別訪問するよう指示された」元信者、苦しい体験語る

9月16日に開かれた全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)東京集会では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の国内外の元信者4人が、体験談を語った。霊感商法が刑事事件化し「コンプライアンス宣言」がおこなわれた2009年以降も、正体隠しの伝道がおこなわれていたり、洗脳が解けたあとも、罪悪感にさいなまれ、困窮した生活を強いられたりしている元信者の実態などが明らかになった。

このほか、牧師の立場から「2世」の支援をおこなう竹迫之氏が、とくに親の「信教の自由」と衝突する未成年の2世への福祉的な支援の難しさや課題について言及し、「宗教団体がからんでいるかどうかは関係なく、虐待のいち類型として、社会福祉の窓口に立つ人をはじめ社会にもっと周知されるべきだ」と訴えた。

●突然来訪した女性の「家系に興味ある?」がきっかけ

中部地方に住む専業主婦の体験談からは、2009年のコンプライアンス宣言以降も、「統一教会と名乗ってはいけない」と指示されながら、伝道活動がおこなわれていた実態が明らかになった。

サラリーマンの夫とその母親、大学生の息子と4人暮らしだった女性は2010年夏のある日、玄関先でそうじをしていたところ、ふらっと訪れた60歳半ばの女性にとつぜん声をかけられた。明るくて品のよさそうな人だなと思ったのが第一印象だった。

「家系に興味はある?」と質問された。ちょうどそのとき、似たような内容を新聞広告で見たばかりで、自分の先祖のことを知ってみたいと思っていた。「グッドタイミング」だと思い、耳を傾けてしまった。

勧誘の女性は「家系を学ぶカルチャーセンターから来たのよ」と団体名など一切明かさなかった。そのときは、統一教会の勧誘などとは、思いもしなかった。

勧誘の女性はその後、何度も家に来るようになり、秋に開催される「家系図鑑定会」に女性を誘った。「1回くらい行ってあげなきゃ悪いかな」という気持ちもあったほか、たしかに興味もあったため、足を運んでみることにした。

鑑定会では、「なぜ先祖供養が大事か」や「先祖供養をしないと子孫に大きな影響を与える」などと言われ、「聞いたからには学びを始める必要がある」と感じた。

●「信じられない自分が悪い」と思い、勧誘活動の道へ

その後、講師による四柱推命をつかった鑑定を受けたところ「来年の1月まで先祖供養をどうにかしないと長男の命にかかわる大変なことが起こる」と言われ、家系図を学ぶため、鑑定会に通うことになった。

統一教会だとわかったのは、それからしばらくたってのことだ。「抜けたい」とか「行きたくない」と思うことはあったものの、その間に「お母さんががんばらなきゃいけないのよ」などと使命感や不安をあおられたりするなかで、「信じられない自分が悪い」「ここでやめたら家系に悪いことが起こるのでは」という意識にかられ、2013年からは勧誘活動を始める一員になっていた。

戸別訪問は、教団が決めた1日あたりのノルマや、想定問答が詳細に記された勧誘マニュアルにもとづいておこなわれていた。その際、先輩信者から「統一教会と名乗ってはいけない」と指示されていた。

戸別訪問では鑑定会にどれだけ動員できるかが求められ、ノルマが達成できなかった際には、反省文を書かされた。さらに、祈祷室にある教団創始者の故・文鮮明氏の肖像画に向かって、「何十回、何百回とある種の罰である礼拝をさせられた」

女性は、「いま考えると詐欺集団の手下のようなことをやっていたなと、怒りと情けなさでいっぱいだ」と振り返った。

●ほんとうの苦しみは脱会後 自分の中心にあった価値観が崩壊

文鮮明氏の死去をきっかけに洗脳が解け2012年、子どもを連れて韓国から日本に戻った2世の女性は、「『脱会』イコール『ゴール』でめでたしめでたしではなく、ほんとうの苦しみはここからがはじまりだ」と、いまもなお、さいなまれながら暮らしている実情について語った。

いちばんの苦しみは、脱会によって、「自分の中心を占めていた価値観や思想すべてが崩れた」ことにより、自分自身でそれを一から作り直さなければけいないことだった。すべてをカルトに支配された環境で生まれ育ったため、葛藤が強く、「脱会したから悪いことが起きたのではないか」「サタンのせいじゃないか」と、何度も教会に戻ろうと思った。

幸い、いのちの電話に相談をしたことで、適切な相談先を紹介してもらえたり、心理治療を受けたりすることができた。現在は、今回のように体験談を語ったり、来月には書籍を出版するなど啓発活動をおこなうことで、失われた自分の人生を取り戻そうとしている。

だが、母親との絶縁や、絶縁した母親から子を守るために住民票の閲覧制限をおこなったため、家族からの助けを得ることができない。韓国に10年いたブランクをかかえ、息子を育てながら再就職をしたものの、やっと就職できた先は非正規雇用で、いまだ暮らしは不安定で苦しい。

女性は「子どもたちには自分の人生を楽しんでほしい。子どもたちにも信教の自由という当たり前を、当たり前に主張できる世の中になってほしい」と願いを語った。

●海外の2世「希望を捨てないでがんばって」

このほか、現在米国に暮らす50歳代の「祝福2世」男女2人もオンラインで体験談を語った。文鮮明氏がメシア(救世主)で霊的な存在だと信じ込まされていた子ども時代を送っていたが、自我が芽生え、外の世界を知っていくにつれ、性的搾取をおこなう統一教会の悪質性に気づき、脱会にいたった経緯を語った。

2人は最後に「これからも2世や3世の真実を伝えていきたい。希望を捨てないでがんばってほしい」「これ以上トラウマをかかえた2世を増やしたくない。一緒に回復の道を歩みたい」と呼びかけた。

(ライター・今川友美)

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