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刑事司法の見直しめぐり、村木厚子さんら法務省に要請書を提出「専門家だけでは感覚が麻痺」「市民感覚もって進めて」
会見の様子(2022年7月28日、都内、弁護士ドットコムニュース撮影)

刑事司法の見直しめぐり、村木厚子さんら法務省に要請書を提出「専門家だけでは感覚が麻痺」「市民感覚もって進めて」

法務省が設置した協議会で刑事事件に関する制度見直しの可否などの検討が開始することを受け、元厚生労働事務次官の村木厚子さんらは7月28日、「取調べの録音・録画の完全実施」などを求める法務大臣宛の要請書を法務省側に提出したことを明らかにした。

要請書を提出したのは、村木さんのほか、連合前会長の神津里季生さん、映画監督の周防正行さんら5名。いずれも2011年6月に設置された法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会で「一般有識者」として委員を務めた。

要請書では、「取調べの録音・録画の完全実施」「改正事項の施行状況に関する十分な検証とこれに基づく議論の実施」「国民への情報開示と国民の声の反映」という3点を主として求めている。

提出後におこなわれた会見で、村木さんは、無実の罪で逮捕された自身の経験も踏まえ、「刑事司法は、私たちの暮らしの中でいつ自分に降りかかってくるかわからない問題だと実感しました。刑事司法について国民が関心を持って、そして信頼して応援できるようにするためにも、今回の協議会での検討内容をきちんと公開して、国民の声を聞いてやってほしいです」と訴えた。

●取調べの録音・録画「全事件・全過程でやってほしい」

法務省が設置した「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」は、2019年6月に全面施行された改正刑訴法にある3年後の見直し規定に基づいたもので、要請書を提出した当日に議論がスタートした。

協議会では、裁判員裁判対象事件や検察庁の独自捜査事件を対象としていた「取調べの録音・録画」に関する対象事件拡大の可否などの検討や、改正刑訴法で導入された証拠開示制度なども議論されるとみられる。

今回の提出した要請書では、取調べの録音・録画は「供述証拠は適正な手続きの下で行われ、任意性・信用性を確保するため」という共通認識に基づく制度であり、すべての事件に当てはまるものだとして、「全事件」かつ任意段階での取り調べを含む「全過程」で実現するよう求めている。

また、証拠開示制度の導入によって、公正な裁判のために必要な証拠が確実に開示されるようになったのか、身体拘束が自白等を獲得する手段として利用される状況が改善されたのかなど、新制度の施行状況などをデータや事例等に基づき検討するよう要請した。

●「市民の感覚をもって検討を進めて欲しい」

村木さんは、特別部会での取りまとめが結果として総意に基づくものではあったものの、取調べの録音・録画の対象が一部事件に限定されることなどについて、当時から「反対」の姿勢だったと振り返り、全事件・全過程での完全実施を求めている。

「刑事司法は、普段はとても遠いところにあると思われているかもしれませんが、被疑者・被告人、被害者、裁判員としていつ関わるとも限らず、いざその時になると非常に大きな関わりとなって、難しい対応に迫られます。だからこそ、市民の感覚は大事だろうと思っています。

また、専門家だけでやっていることで感覚が麻痺して常識がずれていくことがあります。私の事件(郵便不正事件)では、複数の検察官から『執行猶予がつけば、大した罪じゃないじゃないですか』と言われましたが、こういう感覚はどっぷりその世界に浸かっている人たち独自のもので、一般市民とはまったくずれている。

『治安を維持するためなら、多少の犠牲はしょうがない』といった間違った使命感を感じることもありました。できるだけ普通の感覚をもった市民の意見を広く取り入られる方向で検討してほしいです」(村木さん)

神津さんは、「当事者意識をもって、この課題を進めることが大事」と訴える。

「私たち5人は『(特別部会の時に残された)宿題を背負っている』という認識があります。当時は『まずは(新制度を)スタートさせる』ことに重きを置いてスタートさせましたが、残された宿題はものすごく大きい。問題意識を共有しているこのメンバーで、今後も引き続きこの問題についてアピールしていきたいです」(神津さん)

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