農業アイドル自死、遺族側の請求を棄却「パワハラ、過重労働は認められない」 東京地裁
会見する被告側弁護団(2022年6月9日、弁護士ドットコムニュース撮影)

農業アイドル自死、遺族側の請求を棄却「パワハラ、過重労働は認められない」 東京地裁

愛媛県松山市を中心に活動する農業アイドルグループ「愛の葉Girls(えのはがーるず)」のメンバーだった大本萌景(ほのか)さん(当時16)が自死したのはパワハラや過重労働が原因だとして、遺族が当時の所属会社などを相手に、約9268万円の損害賠償を求めた裁判の判決が6月9日、東京地裁であった。

東京地裁の島崎邦彦裁判長は、被告側の行為にパワハラや過重労働があったとは認められず、また同行為によって萌景さんが自死に至ったということはできないとして、遺族側の請求を棄却した。

被告側代理人の渥美陽子弁護士は、判決後に開かれた会見で、「遺族側の主張を認めなかった今回の判決は妥当なもので、当然の結果だったと考えている」と話した。

●地裁「違法行為あったとは認められない」

判決によると、萌景さんは2015年6月、中学2年の時に「愛の葉Girls」のオーディションを受け、所属会社となる「Hプロジェクト」と契約。同年7月から研修生として、2016年7月からはレギュラーメンバーとして活動し、2018年1月頃にはグループリーダーに就任したものの、同年3月21日に自死した。

遺族側は訴訟で、(1)グループで過重な活動をさせていたことなどにより、正常な認識等が著しく阻害される精神状態にさせた、(2)全日制高校進学費用の貸付けを納付期限の直前に確定的に撤回し、希望していた全日制の高校への進学を断念させようとした、(3)社長がグループの活動を続けないのであれば違約金1億円を支払えとの発言をした、という一連の違法行為によって萌景さんが自死したと主張。

これに対し、被告側は(1)〜(3)いずれも事実ではないとして全面的に否定し、被告側の行為と自死との間に相当因果関係はないと反論していた。

東京地裁は、(1)グループ活動によって、萌景さんに正常な認識等が阻害される程度の強い精神的負荷がかかっていたとは認められないと認定。

(2)進学費用の貸付撤回を伝えられたことを萌景さんが相当程度重く受け止めていたことは否定できないが、萌景さんの母から萌景さんの生活態度などの相談を受け、母の了承を得た上で、生活態度や考え方を改めるよう指導する趣旨で貸付けを一時的に留保するものだったとして、指導の範疇を超えるものとは認められないとした。

さらに、(3)社長が萌景さんがグループを辞めるなら1億円を支払えと発言したとは認められないとし、これら全体を通してみて、萌景さんを自死に至らしめる違法行為に該当するとは認められないと結論づけた。

なお、萌景さんが自死を決断したことについては、「直接的な契機を明らかにすることは困難であるといわざるを得(ない)」としたうえで、被告側の行為により自死に至ったということはできないと判断した。

●会社側から遺族などへの損害賠償請求は別訴で係争中

この問題をめぐっては複数の訴訟が提起されており、今回の判決は、遺族側から会社側に対し、萌景さんの自死を理由とする損害賠償請求をした訴訟についてのものだ。被告側弁護団によると、会社側から遺族などに対し、名誉毀損などを理由に損害賠償を求める裁判は別の訴訟で係争中だという。

渥美弁護士は、判決後の会見で、「会社側が責任を問われることは一切していないと、早い段階から確信を持っていた」と話し、今回の判決を「妥当なもの」と評価した。

「Hプロジェクト」代表取締役の佐々木貴浩社長は、「愛の葉Girlsのメンバーであった大本萌景さんのご冥福をお祈りいたします。本日言い渡された判決は、弊社の社員や愛の葉Girlsのメンバーが生前の萌景さんに真摯に向き合っていたことを、裁判所に認めていただいた結果であると考えております」と書面でコメントした。

●遺族側のコメント

萌景さんの遺族は、遺族側代理人が共同代表理事を務める「日本エンターテイナーライツ協会」のウェブサイトで、次のようにコメントした。

「今回の裁判所の判断は、私たちの主張が認められず、大変残念です。萌景の自死から今まで沢山の方に支えられながら今日という日を迎えられております。この場を通じて、改めて萌景や私たち遺族を支援してくださる方に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

今後、弁護団の先生方と相談した上で、控訴して、私たちの主張が認められるようにしていきたいと考えています。私たち遺族は、裁判に正義がある、と最後まで信じて闘っていきたいと思います」

同ウェブサイトでは、今回の判決を受けて、直ちに控訴したうえで、控訴審において主張立証をしていく予定としている。

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