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「定価20万円」の着物を「35万円」で販売…「いくらで売ってもいい」こんなのアリ?
画像はイメージです(よっちゃん必撮仕事人 / PIXTA)

「定価20万円」の着物を「35万円」で販売…「いくらで売ってもいい」こんなのアリ?

弁護士ドットコムライフの体験談募集に、50代の女性が、大手着物店で販売の仕事をしていたときの経験を投稿しました。女性が働いていた店では、客が来店すると、言葉巧みに客の身体に着物(反物の状態)や帯を巻き付けて、客が気に入れば着物はいくら、帯はいくらと明細を出すそうです。しかし、ここで1つ問題が。

女性いわく、着物は「洋服と違いハンガーにぶらさがった商品を自由に見る訳じゃない」ため、客は自分の身体に巻き付けられた着物や帯の定価が分からないのだとか。それをいいことに、店員の中には、着物を定価よりも高く売ったり、仕立て代込みの価格にもかかわらず、別途仕立て代を請求する人がいたといいます。女性によると、20万円ほどの着物を35万円で売っていた店員もいたそうです。

このような販売方法に不信感を抱いた女性は、上司に「違法ではないか」と疑問をぶつけました。しかし上司からは「あくまでも定価は幾らぐらいで売れば良いかの目安で会社が付けている」という理由で、いくらで売ってもいいのだと言われたそうです。

客が本来の値段を知らないことを利用して、店側が値段をつり上げて販売することは、法的に問題ないのでしょうか?上田孝治弁護士の解説をお届けします。

● 価格の決め方は問題ないが、不当表示であれば違法になりうる

商品の販売価格は、契約当事者が合意すればその価格で決まるのが大原則です。したがって、店側が価格を伝え、客側がそれを了承すれば、その価格での販売契約が成立したということになります。

この点、今回の着物のケースでは、定価と言われているものが店側では内部的な「目安」とされ、実際に販売する際に、個々の具体的な価格を決めていたようです。

仮に、店側が、価格を誤って表示するなどして、本来販売する予定だった価格よりも高く売ってしまったということであれば、代金の取り過ぎですから、返金する必要があるでしょう。逆に、低い価格で売ってしまった場合は、店側の錯誤無効が成立するかどうかということになりますが、今回とはケースが異なります。

繰り返しになりますが、あくまでも、販売価格の決め方としては、店側が伝えた価格で客側が了承すればその金額で決まりますので、今回のケースのような価格の決め方に問題はありません。

もっとも、この価格の決め方とは別の問題として、店側が店頭や商品などで表示している価格が、実際の販売価格よりも安い場合は、不当表示として違法になる可能性がありますし、販売方法や販売量なども合わせて総合的に考えると、販売行為自体が不法行為に該当し、損害賠償請求の対象になることも考えられます。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

上田 孝治
上田 孝治(うえだ こうじ)弁護士 神戸さきがけ法律事務所
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題、不動産・マンション管理法務に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行っている。

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