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「10年セクハラ」で障害者支援の実力者を提訴 女性職員ら「未来のために声をあげる」
オンライン会見の様子(2020年11月16日、キャプチャは弁護士ドットコムニュース)

「10年セクハラ」で障害者支援の実力者を提訴 女性職員ら「未来のために声をあげる」

障害者支援の社会福祉法人「グロー」の理事長・北岡賢剛氏から、セクハラやパワハラ、性暴力を長期にわたって受けていたとして、元職員の女性と、北岡氏が理事に就いていた社会福祉法人「愛成会」の女性幹部が、北岡氏とグローを相手取り、慰謝料など計4200万円の損害賠償を求める裁判を東京地裁に起こした(11月13日付け)。

原告の女性らは11月16日、会見を開き、「北岡氏にNOと言える人はほとんどいなかった」「未来にも続いてしまう」と話した。

●訴えられた北岡賢剛氏

原告らの代理人を務める笹本潤弁護士によれば、北岡氏は「社会福祉の分野の実力者」。

障害者や高齢者の介護・支援事業を目的とする社会福祉法人「グロー」(滋賀県)の理事長を務めている。また、グローと提携関係にあり、障害者施設の運営などを手がける社会福祉法人「愛成会」(東京都)の理事を、辞任する2020年9月24日まで務めていた。内閣府の障害者政策委員会の委員でもあった。

●訴えを起こした女性ら

裁判を起こした2人の女性は、障害者アートに関心を持ち、社会に広めるために活動してきた。ともに、上司の立場を利用したセクハラやパワハラを受けてきたと主張する。

鈴木朝子さん(仮名)は2012年にグローに入社。2019年8月に退職した。

木村倫さん(仮名)は愛成会に入社したのち、2015年から幹部として法人の運営にもたずさわっている。

●訴えの内容

訴状や会見で、2人が受けたセクハラなどの行為が説明された。

鈴木さんは、入社3年目の2014年11月、東京出張中に、「仕事の話があるから」として、宿泊していた中野のホテルの北岡氏の部屋で、2人きりになると、ベッドでキスや胸を舐められたという。

その前後も、タクシー内で体を触るセクハラや、出張時のセクハラが続き、2019年8月に退職に至った。

●気づけば上半身は裸だった

木村さんも、2012年9月、北岡氏から懇親会に誘われ、ひどく酔ってしまった。気が付いたときには、中野のホテルのベッドで寝ていたという。「上半身は服を脱がされていました」。

「北岡氏は下着姿でいびきをかいて寝ていました。そのときの絶望感をいまでも忘れません。仕事関係者が集まる場で、木村さんはいい胸をしていると言いふらしていました」

それ以前、以降も、「朝まで一緒にいてほしいな」などのセクハラメールが送られてきたり、タクシーでお尻を触られたりするなどのセクハラを受けたという。

10年以上のセクハラ・パワハラ行為によって、不眠などPTSDに苦しんでいる。

●反抗できなかった

鈴木さんは、法人においては、圧倒的な権力を持つ北岡氏の「絶対王政」が敷かれており、「北岡氏にNOと言える人はほとんどいなかったと思う」と話す。

木村さんも、反論すると、必要な打ち合わせから外されるなどのパワハラにあうため、「表立って反論するのは不可能だった」という。

周囲に相談しても、助力は得られないどころか、二次被害を受けることまであったそうだ。

「幹部からは、そんなに長く続くセクハラは存在しない。あるなら不倫だ。あなたのせいでしょうとのしられる二次被害もありました。今回の提訴で(幹部の職を)解任されるかもしれないと危惧しています」

●謝罪の言葉を求めたが

原告側は、北岡氏に対して、2020年4月と6月、謝罪・慰謝料の支払い・役職からの辞職を求めた。具体的な事実関係がわからないなどの理由で、なされなかった。

裁判では、北岡氏の原告らに対する性暴力やセクハラ、パワハラ行為の責任を追求するとともに、グローについても、安全配慮義務違反があったとして、損害賠償責任を求めていく。

●北岡氏、グローは「コメント控える」

会見後、編集部が、北岡氏やグローに見解を求めたところ、グローは「係争中であることは認識しているが、このタイミングでコメントさせていただくことは差し控えさせていただきます」と述べた。

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