2019年11月02日 09時03分

不登校児童の受け皿「フリースクール」、運営困難の壁を乗り越え奮闘

不登校児童の受け皿「フリースクール」、運営困難の壁を乗り越え奮闘
「英明塾」代表・川合雅久氏(2019年、肥沼和之撮影)

フリースクールをご存じだろうか。不登校や引きこもりなど、さまざまな事情で学校に通えない子どもを受け入れる、民間の教育機関のことだ。NPOやボランティア団体、個人などが運営し、全国に234(※H27年・文科省による)の施設がある。

これまで教育現場での不登校対策は、「学校に復帰させること」が前提だった。だが2016年12月に成立した教育機会確保法により、「無理に学校に行く必要はない」「学校以外の学びの場も重要という方針に転換。フリースクールの重要性がより高まったのだ。

とはいえ、フリースクールがまだ世間一般に認知されているとは言い難い。そもそもどういう施設なのか。どのような現状で、どんな課題を抱えているのだろう。(ジャーナリスト/肥沼和之)

●日本語を学びたい外国人の受け皿にも

とある平日の13時過ぎ、代々木駅前にある「フリースクールゆうがく」を訪問した。

二人の生徒が机に向かっている。T君(15歳・男子)とYさん(13歳・女子)だ。2カ月前に日本に来たばかりという外国籍のT君は日本語の書き取りを、Yさんは数学の勉強をしていた。ここでは決まった授業はなく、一人ひとりが学びたいことを勉強できるのだそう。パソコンを操作したり、絵を描いたりしてもOKという。

Yさんは小学校のころ、学芸会の練習中、先生に怒られたのがきっかけで不登校になった。中学に入学するも、「先生が怖い」というイメージは消えず、学校の心理カウンセラーの勧めでゆうがくに通うようになった。

「家では全く勉強しなかったけど、ここに来てからするようになった」とYさん。ゆうがくに在籍する生徒は全部で7人。大人数や団体行動が苦手というYさんには、この規模感もちょうどいいという。「高校や大学にも行きたい。将来は美容師か、本や音楽関係のお仕事に興味があります」とはにかんだ。

T君は今年8月、家庭の都合で日本へ越してきた。来年から日本の高校へ通うことも決まっている。日本語がまだ不自由なため、公立中学ではなくここで学んでいるという。フリースクールが、日本語を学びたい外国人の受け皿にもなっているようだ。

「休憩のときにはみんなでトランプしたりして遊んでいるよ。(校外学習、課外活動など)いろいろ新しいことがあって楽しい」と、すっかりほかの生徒たちと溶け込んでいるようだった。

●フリースクールに通う子どもが少ない理由

現在のフリースクールの状況について、「日本フリースクール協会」理事長であり、1975年から続くフリースクール「英明塾」(江戸川区)の代表でもある川合雅久氏に聞いた。

――フリースクールに通っている子どもは、全国にどのくらいいるのでしょう。

不登校の児童数は16万4528人(H30・文科省による。小学生は4万4841人、中学生は11万9687人)です。そのうち、フリースクールに通っている小中学生は5000人程度でしかありません。

その理由の一つとして、フリースクールが近くにない、という問題があります。英明塾には埼玉や栃木、神奈川から小学生が一人で通ってきますが、児童が一人で遠くまで通うのは難しい場合もある。

また、月謝が家庭の負担になることもあります(※フリースクールの月会費は平均3万3千円・文科省による)。文科省は2019年8月、フリースクールに通う人へ交通費、教材費、活動費など経済支援をする方針を発表しました。ただ、支給する金額は三分の一のみです。

しかも、対象となるのは出席扱いになった約2000名(※H27年・文科省の調査発表をもとにおおよその数字を算出)だけです。

――出席扱いとは?

フリースクールに通った場合でも、在籍する学校で出席したという扱いになることです。その判断は、在籍している学校の校長の裁量で決まります。

そのため学校に連絡できない生徒、例えばいじめを受けている、DVシェルターに入っている、言語障害があるなどの理由でフリースクールに通っていることを学校に伝えられない生徒は、出席扱いになりません。

そのためフリースクールに通う約5000人のうち、約2000人しか出席扱いにならないのです。

●不登校に含まれない「見えない生徒」をどうするか

――そもそもフリースクールに通う子どもは、不登校児の数からするとかなり少ないように思えます。

実際には、不登校の子どもは数字よりも多く、フリースクールに通う子どもはより少ない割合だと考えています。文科省が不登校としている生徒はごく一部で、それ以外に「見えない不登校生徒問題」があります。

不登校に含まれない不登校生。例えば学校には通っているけど、授業には出ず、保健室や校長室で一日を過ごす子がいます。そういう子は不登校ではないのか。

また高校生の不登校生徒は8万~10万人と言われていますが、それは全日制のみ。定時制も含めるともっと増えるでしょう。さらに、年間欠席数が30 日未満の、不登校傾向にある中学生は約33万人(H30、日本財団による)にもなります。

数字からは見えていない生徒をフリースクールが支援しないでいいのか、課題になっています。

もっとも大きな問題は、本当に見えない不登校生問題。部屋から出られず、人に会うことも相談することもできないため、状況が全くわからなくなってしまっている子です。文科省が発表した不登校児童数から、フリースクールや適応指導教室、個別教室などに通っている生徒を除くと、5万人以上が該当すると思われます。

こういった生徒にはアウトリーチ(訪問支援)が必要ですし、それを行える支援員の養成も急務だと考えています。

――そのほかに、フリースクールが抱える課題について教えてください。

フリースクールは、許可などいらずに始められますが、継続は困難です。

多くのフリースクールは、開設して2~3年で閉鎖してしまいます。大きな理由はお金の問題で、月謝だけでの運営が難しいから。50人が登録したのに、実際に通うのが5人などであれば、ほかに収入がないと続けられないですよね。

また、ボランティアで手伝ってくれる人がいれば、その人たちの交通費や弁当代を渡さなければいけません。その費用を稼ぐために、私もアルバイトをしながら、寝る時間を削って運営していました。

人材不足もあります。フリースクールの先生は、心理学や病理、社会学など幅広い分野に詳しくないといけません。高校生や大学生の不登校児童には、就労支援も行う必要もあります。そういったことができる人材はなかなかいないので、継続が難しいのです。

――フリースクールがすべてを背負うのではなく、公立学校や行政と連携していけばいいのでは?

地域によっては、フリースクールと連携するのを敬遠する公立学校があります。校長がフリースクールでは出席を認めず、教育支援センター(適応指導教室・行政が運営する不登校児童向けの教室)に行くか、在籍する学校へ通うよう指導することもあります。

また各省庁が支援の準備をしていますが、15歳未満は文科省、15歳以上は厚労省が管轄です。組織が縦割りで連携がされておらず、当てはまらない児童はどちらに入れるのか、ということも決められていません。

―― 一般の方が、フリースクールの課題解決に貢献できることはありますか。

不登校や引きこもりが悪だと考える親や教師はまだたくさんいます。すると、児童は生きづらいと思ってしまう。そういうケースを他人事ではなく、我が身と考えていただければ。全日制の中学や高校が良いわけでも、正解でもありません。

フリースクールの授業は、公立学校よりレベルが高いこともあれば、新しいやり方を取り入れいていることもあります。教育機関として選択肢の一つにしていただければと思います。

最後に(肥沼)

ダイバーシティが叫ばれる昨今、教育の形も多様化している。フリースクールの認知度がより広まり、教育機関としてのあり方や制度に関する議論が、活発化することがまず大事なのだろう。そして教育機会確保法の理念にもとづき、一人ひとりに合った場所、方法で学べることが当たり前になれば、救われる児童も増えるに違いない。

【著者プロフィール】肥沼和之。1980年東京都生まれ。ジャーナリスト、ライター。ビジネス系やルポルタージュを主に手掛ける。東京・新宿ゴールデン街のプチ文壇バー「月に吠える」のマスターという顔ももつ。

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